貯金とダイエットは似ています。
どちらもすぐに始めた方が良いのですが、「来月から始めよう」となりやすく、しばらく続いたとしても「ずいぶん頑張ったからちょっとだけ食べちゃおう(ちょっとだけ使っちゃおう)」となりがちです。
ダイエットの中断を防止するのはなかなか大変ですが、貯金の中断を防止するには良い方法があります。
それは「保険商品」を利用することです。
金融商品をあまり利用したことのない初心者の方にこの話をすると「え!保険で貯金ができるの?」と驚かれます。
しかし保険商品は、本来の機能である「保障」の他に「貯蓄」の機能も持ちあわせ、しかもそれが「続けやすくて、止めにくい」という、お金を貯めるにはもってこいの特徴まであるのです。
そこで今回はそんな「保険商品」の
- 保険で貯蓄ができるしくみ
- 貯蓄性のある保険の紹介
- 保険商品のメリット・デメリット
などについて、FP(ファイナンシャルプランナー)の筆者が詳しく解説します。
「私は意志が弱い」と自覚のある方必見の内容です。ぜひ最後までお付き合いください。
FPが教える基本の資産運用商品(全7回)
保険で貯蓄ができるしくみ
保険には「保障」と「貯蓄」2つの機能がある
生命保険を例に取ると、保険会社は被保険者(保険の対象となる人)に万が一のことがあった場合、死亡保険金を支払わなくてはなりません。
保険の基本機能は「保障」ですから当然です。
この死亡保険金を支払うために保険会社は、「責任準備金」という形で契約者から預かった保険料を貯めていきます。
そしてただお金を貯めて寝かせておくのは無駄なので、株や債券を始めとする金融商品を使って運用します。
この運用が「長期間」できるという点が、保険商品の強みです。
例えば30歳で生命保険に加入した女性が平均寿命まで生きたとすると、50年以上運用できることになります。
長く運用できればその分利息を長期間受け取ることができますし、また短期間の運用よりも「有利な利率」で運用することができます。
預貯金で満期期間が50年にもなるものはありません。
従って、保険商品のほうが預貯金等よりも利率が良くなるのです。
そうして運用などで大きく増えた責任準備金は、満期のある保険であれば「満期金」として、満期のない保険を中途解約した場合は「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」として、契約者に返還されるのです。
これが保険商品の2つの機能です。
続けやすくて止めにくい理由とは
保険の契約をすると毎月「強制的に」保険料が引き落とされていきます。貯金と違って「今月は止めておくか」ということができません。
これが続けやすい理由です。
次に止めにくい理由ですが、契約者が支払う保険料はすべてが責任準備金に使われるわけではありません。
様々な事務手数料や運用する費用もかかりますし、保険会社だって利益をあげなければなりません。
そのため保険契約が始まったばかりの頃は十分な責任準備金が貯まっていません。
従ってその時点で解約すると元本割れをしてしまい、損をしてしまうのです。
お金を貯めようと思っているのに損をするのは嫌ですから、渋々ながらも保険(貯蓄)を続けるというわけです。
保険の基本「3つの保険」
次に貯蓄機能のある保険と、ない保険のお話をします。
「がん保険」「医療保険」「傷害保険」…。世の中には色々な名前のついた保険がありますが、そのすべての保険は「定期保険」「養老保険」「終身保険」の3つに分けることができます。
定期保険とは
定期保険は、「期間を定めて」保障する保険です。
例えば1,000万円の定期保険を掛けていた場合、保険期間中に被保険者が亡くなれば1,000万円の保険金が支払われます。
しかし電車などの定期券と同じで、期間が1日でも過ぎればまったく保障されません。
一定期間中だけ保障すればよいので、保険会社はあまり責任準備金を貯めたりしません。
そこで定期保険には、満期金や解約返戻金が基本的にありません。つまり被保険者が亡くなった場合以外は1円もお金が戻ってこないのです。
いわゆる「掛け捨て保険」とはこの定期保険のことをいいます。
ただ良いところもあって、責任準備金をあまり貯める必要がないので高い保険料を集める必要がありません。
従って、3種類の保険の中で定期保険が最も保険料が安くなります。
ちなみに金融商品に馴染みのない初心者の方によく「県民共済や全労済の共済はどうですか?」と聞かれますが、共済のほとんどはこの定期保険タイプです。
養老保険とは
「老後を養う」と名前にある通り、老後資金を貯められるような貯蓄性があるのが、養老保険の特徴です。
保障機能としては定期保険と同じです。
例えば1,000万円の養老保険を掛けていた場合、保険期間中に被保険者が亡くなれば1,000万円の保険金が支払われます。
ただ定期保険と違うのは、被保険者が無事に満期を迎えても1,000万円が受け取れるのです。
もちろんその分保険料は高くなりますが、保障と貯蓄を兼ね備えた保険として人気があります。
終身保険とは
「身が終わるまで」の名の通り、一生涯保障が続くのが終身保険です。
そして実は終身保険の正体は「満期のない養老保険」なのです。
そのため終身保険にも貯蓄性があります。
そして満期はないので、保険会社は被保険者が亡くなって保険金を支払うか、保険を解約されるまで預かっている保険料(責任準備金)を運用し続けます。
そこである程度責任準備金が増えたところで解約し、解約返戻金として受け取れば老後の生活資金などとして利用することもできるのです。
保険会社が破綻した場合は大丈夫?
銀行などの金融機関が破綻した場合にはペイオフで1,000万円までは保証されますが、保険会社にも同じような保証のシステムがあります。
生命保険の場合は生命保険契約者保護機構への加入が義務付けられており、この生命保険契約者保護機構が破綻した生命保険会社の「責任準備金の90%」を支払います。
従って、払い込んだ保険料がすべて戻ってくるわけではありませんが、ある程度の金額は保証されていると言えます。
金融商品初心者にもおすすめ 貯蓄性のある保険はこれだ!
養老保険
貯蓄性のある保険といえば、上で説明した養老保険です。満期を定年退職の時期にあわせておけば、老後資金の準備にぴったりです。
学資保険
子供の大学進学時(18歳など)を満期とした養老保険が、学資保険の正体です。
ただし通常の養老保険は被保険者が亡くなった場合に保険金が支払われますが、学資保険の場合は被保険者が子供なので、契約者である親に万が一のことがあった場合に以後の保険料の支払いが免除される(もちろん将来の学資金は満額受け取ることができる)「払込免除特約」が付くようになっています。
年金保険
養老保険の場合は、満期になると基本的に一括で満期金を受け取ります(分割で受け取ることができるものもあります)。
しかしこの年金保険は、その満期金を5年、10年といった期間内に毎月一定額、年金のようにして受け取ることができるタイプなのです。
公的年金にプラスして、「ちょっと豊かな老後生活」を送りたい人に向いています。
終身保険
上記でも紹介した終身保険は、高齢化社会が進む現代では、養老保険に取って代わる人気の保険です。
養老保険と違い満期が無いので保障を続けようと思えばずっと続けられますし、途中で解約して老後資金に使うこともできます。
また80%を解約して老後資金に充て、後の20%分は葬式代に充てるといったフレキシブルな使い方ができるのも人気の秘密です。
変額保険
通常の保険は、保険金額が1,000万円なら、受け取ることができる保険金は1,000万円です。
ところが変額保険の場合はこの受取る保険金の「額が変わる」のです。
変額保険は保険と投資信託を組みあわせたような商品だとよく言われます。
変額保険以外の保険では保険会社が責任準備金を元に運用を行いますが、変額保険では契約者がその運用方法を「指定」できるのです。
そのため運用方法に日本株や外国株を指定して、受け取る保険金を2倍、3倍に増やすことも可能です。
ただ運用に失敗すれば保険金は減ってしまい、元本を割ってしまうことさえあります。
そこで元本割れは絶対に避けたい場合は運用先を日本国債などに指定します。
一般的に保険は予定利率(保険会社がこの利率までは運用できると決めた利率)が決まっているのでインフレに弱いのですが、この変額保険は株式などで運用できるため、インフレへのリスクヘッジとしても利用できます。
金融商品に馴染みのない初心者の方で「投資信託はちょっと…」という方は、この変額保険で運用を試してみるのもよいかもしれません。
保険商品のメリット・デメリット
保険商品のメリット
- 保障と貯蓄を同時に準備できる
- 一般的な預貯金より利回りがいい
保険商品のデメリット
- 保険会社が破綻した場合、責任準備金の90%までしか保証されない
- 掛け捨ての保険に比べ保険料が高い
- 早期に解約すると元本割れの可能性が高い
- 変額保険以外はインフレに弱い
死亡保障で家族にお金を残しつつ老後の資金を貯めるには保険商品がベスト
株式や債券、投資信託など、金融商品にも様々なものがありますが、初心者にも身近で、自分に万が一のことがあった時に家族にお金を残すことができ、しかも老後の資金まで貯めることができるのは保険しかありません。
預貯金と掛け捨ての保険、別々に考えるなら貯蓄性のある保険は割高ですが、一石二鳥の効果を考えればかなりお得です。
保障と貯蓄の両立を考えている方は、ぜひ検討してみてください。
さて、初心者の方に金融商品の知識をお伝えしてきたこの連載もこれで最終回となります。
もし今回の記事で金融商品に興味を持ち、「もっと勉強してみたい」と思われた方にはファイナンシャルプランナー3級などの資格を目指すことをおすすめします。
ライフプランニングに始まり、資産運用、税金、不動産、相続などを網羅的に学べるファイナンシャルプランナーの資格試験は、他人にアドバイスをするだけではなく、「自分のお財布を守る」知識を得るには最適の資格です。
連載第1回でお話ししましたが、自分のお財布は自分で守る時代です。そのための武器をぜひ手に入れてください。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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