こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
連載「知的財産で売上UP!活用法&リスク管理法」 では、知的財産権を売上UPに繋げるための活用方法についてお話ししています。
前回はその活用方法の4つ目、起業や新規事業の探索に使える「他人の知的財産のライセンスを受けるという活用方法」についてご説明しました。
第7回の今回はその続きとなります。前回は、他人のアイデアを活用すべく、特許、商標、意匠などについてライセンスを受けたり、買い取ったりするための方法を2つお伝えしましたが、今回は3つ目の方法として、 フランチャイズに加盟するということについてご説明します。
フランチャイズとはどんなしくみ?
フランチャイズという言葉は、ほとんどの方が聞いたことがあると思います。
コンビニやマクドナルド、ファミレスなどのイメージでしょうか。
フランチャイズとは、自社だけで経営を行うのではなく、本部の事業者が他の事業者と契約を行い、商標やノウハウなどの使用許諾をする代わりに対価を受け取るしくみです。
本部の事業者側をフランチャイザー、フランチャイズに加盟する事業者側をフランチャイジーといいます。
フランチャイズと知的財産の関係
二者間でのフランチャイズ契約において、ほとんどの場合に商標などの知的財産権についてのライセンスが含まれています。
例えば、飲食店などの場合は、お店の名前、ロゴマーク、キャッチフレーズなどは、お店独自の財産、つまり知的財産である場合も多く、商標権による保護の対象となります。
これらには、それまでお店の経営で蓄積されていった信用が化体しているので、当然価値があります。
そのため、フランチャイズ加盟店は、これらの信用を活用できるのです。
有名なお店だと、マクドナルドや道頓堀などがフランチャイズ展開をしていますが、これらのお店の名前は誰もが知っていて、長年かけて蓄積された信用力があるので、フランチャイズとして新たな店舗を出しても自然とお客さんは入っていきます(立地などの条件が悪くなければですが)。
また、フランチャイズでは商標以外にも、経営ノウハウを教えてもらえるので、売上が上がりやすくなります。
フランチャイズ展開をしているお店だと、多数の店舗での様々なノウハウや事例などが蓄積されているので、それらをうまく活用することで当然経営も有利になります。
また、フランチャイザーがもし商標だけではなく特許や意匠も保有していれば、それらも併せて特許ライセンスを受ける場合も出てきます。
つまり、フランチャイズ契約というのは、様々な知的財産についてのライセンスが含まれています。
フランチャイズに知的財産が大きく絡んでいることは、ほとんどの方が意識していないと思いますが、よくよく考えるとそれを理解できるかと思います。
フランチャイズこそ、他人のアイデアを活用するための主要な手段なのです!
さらに、フランチャイズは知的財産以外の点においても、独自に開業する場合と比べた際のメリットがたくさんあります。
ここでは詳しい説明は割愛しますが、資金調達がしやすい、存続率が高くリスクが低いといったことが挙げられます。
なお、フランチャイズは飲食店以外で様々な分野で行われているので、起業や新規事業を考えている方はぜひご検討してみてはいかがでしょうか?
フランチャイズに加盟する人を募集している企業の情報を載せているサイトや、展示会などもありますので、それらをご活用いただければと思います。
以上、他人のアイデアを活用する、すなわち知的財産権についてのライセンスを受ける、あるいは知的財産権を買い取るための、主な方法をお伝えしました。
他人のアイデア(知的財産権)を活用するメリット
続いては、他人のアイデアを活用、特に、他人の知的財産権を活用することのメリットについてお伝えします。
主なメリットは以下の3つになります。
メリット① 自分でアイデアを持っていなくても起業や新規事業ができる
世の中には、起業に興味があるけど起業するためのアイデアがない、何をしたらよいかわからない、といった人が多くいます。
通常の考えであれば、起業ネタは自分自身で考えるべきということになりますが、そうしなければいけないという決まりはありません。
むしろ、他人のアイデアを取り入れた方が、格段に選択肢が広がるので合理的な考え方といえます。
前回と今回の記事でご紹介したように、アイデアを使わせてくれる相手方の候補はたくさん存在しますので、選択肢は何千、何万倍と広がるのです。
また、最初は人のアイデアを使い、その後自分の新たなアイデアを加えていくというスタンスも良いと思います。
自分と他人のアイデアを組み合わせて、より価値のあるアイデアができる可能性は十分にあります。
メリット② 手間や費用が省ける
新しいアイデアを考え、それをさらに具体的に深掘りしていくとなると、それなりの時間がかかります。
また、特許、商標、意匠などの知的財産権を取得するとなると、時間に加えて費用もそれなりにかかります。
特許の場合は、一件につき60~80万円前後かかります。
もし知的財産権についてのライセンスを受ける場合は、基本的には売上の一部を支払う形となるので、初期費用がかからないか、あるいは安く済む場合が多いです。
メリット③ アイデアをほぼ独占使用できる
知的財産権についてライセンスを受ける場合は、保護・独占されているアイデアを使うための許可を受けることになるので、許可された人(企業)と知的財産権の保有者しかそのアイデアを使えません。
なお、ライセンスの方式として一般的なのは、知的財産権の保有者とライセンスを受けた者がアイデアを使えるというもの(特許法78条 通常実施権等)ですが、知的財産権の保有者ですらそのアイデアを使えなくなるという制度(特許法77条 専用実施権等)もあります。
後者の場合は、ライセンスを受けた者が完全に独占的にアイデアを使えることになります。
これらのように、自分自身で知的財産権を取得しなくても、ライセンスを受けることによって、あるいは知的財産権を買い取ることにより、アイデアを独占使用することが可能となるのです。
連載「知的財産で売上UP!活用法&リスク管理法」、今回は、他人のアイデアを使う、とりわけ特許などの知的財産権についてライセンスを受けるメリットについてご紹介しました。
自分が保有している知的財産権を活用するという発想はあっても、他人の知的財産権を活用するという発想を持っている人はごく少数です。
この機会にぜひ、他人の知的財産権を活用することを考えてみてはいかがでしょうか。
私も知的財産権についてのライセンスや売買を促進し、個人の方や中小企業様を支援していきたいと考えております。
次回は、知的財産権のリスク管理についてお話しします。
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