こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
連載「知的財産で売上UP!活用法&リスク管理法」 、前回までは、知的財産権を売上UPに繋げるための活用方法についてお話ししてきました。
今回は、知的財産に関するリスクについてご説明します。
事業運営や日常生活において気を付けなければいけないのは、知的財産権の侵害です。
知的財産権の侵害とは、特許、商標、意匠、著作権で具体的な定義は異なりますが、ざっくり簡単にいうと、
「知的財産権で保護されたアイデアと同じものあるいは似ているものを無許可で使うこと」です。
特許侵害の例(模倣販売)
侵害のイメージを持っていただくために、1つ例をご紹介します。
今回は、筋トレ用のダンベルを例にしてみます。
(以下、説明のためにすべて私が作った話となりますので、実際にあった話ではありません)
まず、そのダンベルについてA社が特許を持っているとします。
また特許の内容は、ダンベルの重さを適宜変えられるように、プレート(重り)をシャフトから自由に取付け・取外しができるような構造となっています。
A社がそのダンベルを開発して販売し、その後売れ行きが好調になり、競合他社であるB社がその状況を見て、真似をして販売しようと考えました。
ただ、完全な模倣だと違いがわからないので、B社はダンベルの色や形を変えつつ模倣をして、そのダンベルを販売しました。
ここで、B社が模倣したダンベルの構造は、A社が取得した特許と同じく、プレート(重り)をシャフトから自由に取付け・取外しができるようにして適宜重さを変えられるものです。
そのため、色や形が違っても特許の内容となっている構造に関しては両者とも同じであるため、この場合はB社は、A社の特許を侵害していることになります。
以上、特許の侵害の例についてお伝えしました。
知的財産権を侵害するとどんなリスクを負う?
続いて、特許などの知的財産権を侵害するとどのようなリスクを負うことになるか見ていきます。
大きなリスクは3つあります。
リスク① 使用を差し止められる
知的財産権における法律には、差止請求権というものがあります。
これは、他人に特許などの知的財産権を侵害されると、侵害となった行為をやめさせることができるものです。
つまり、特許で保護された内容を使用(正確には実施といいます)されると、その使用行為をやめさせることができるということになります。
上記のダンベルの例で考えると、A社が特許を取得したダンベルを、B社が製造や販売をして特許を侵害すると、A社はB社に対して、ダンベルの製造や販売をやめるように主張できます。
最初は文書をB社に送付して、侵害行為をやめるように警告をするのが一般的です。
警告をしてもやめない場合は訴訟を行い、そのときに差止請求権を行使することになります。
リスク② 賠償金を払わされる
知的財産権の侵害によって、権利者に損害が発生したと認められた場合は、民法上の不法行為となり、権利を侵害した者は損害を賠償する責任を負うことになります。
また、知的財産権の侵害によって得た利益を損害とみなすことができます。
そのため、B社がA社のダンベルを模倣して販売を行い、利益を出した場合は、利益に応じた損害賠償金を支払う責任が生じるのです。
特許を侵害して利益を出しても損害賠償金を支払うことになれば、結局は利益を出すことが難しくなります。
リスク③ 使用料を払わされる
これは、差し止められるよりはまだ良いのですが、知的財産権を侵害した後も継続して商品・サービスの販売・提供などを続けさせてもらえる場合は、その見返りとして使用料(実施料)、すなわちライセンス料の支払いを要求されることが多いです。
この場合は、ライセンス契約となり、売上の数パーセント程度を継続的に支払う形になることが多いです。
上記のダンベルの例の場合は、A社がB社の売上の一部をライセンス料として獲得する方が合理的と考えた場合には、差し止めをすることなくライセンスをすることになります。
以上、知的財産権を侵害した場合のリスクについてご説明しました。
知的財産権の侵害を防ぐためには?
続いては、他人の知的財産権を侵害しないためにはどうすればよいかをお伝えします。
知的財産権の侵害を防ぐ手段を一言でいえば、「事前に調査をする」ということになります。
調査は知的財産に関する専門家であればだいたいの人が可能なので、そういう人に依頼すれば基本的に大丈夫です。
私も特許調査や商標調査はよく行います。
また、調査を行う主なタイミングは以下のようになります。
・商品やサービスを開発する前やリリースする前
・商品・サービス名や店名などを決める前
・会社名や屋号を決める前
これらのタイミングであれば、設計変更や名前の変更をしてもそれほど損失はありません。
逆に商品・サービスを販売してから、あるいはお店や会社を始めてしまってから侵害に気付いたとなると、そこから色々なものを変更しなくてはならないので損失が大きくなります。
私のクライアントや知り合いなどでも、実際に商標権を侵害してしまっている事例がかなりあります。
特許はともかくとして、商標は非常に侵害が起こりやすいのです。
そのため、トラブルは未然に防ぐということが大事になります。
連載「知的財産で売上UP!活用法&リスク管理法」 、今回は、知的財産権を侵害するリスクについてお伝えしました。
知的財産を侵害するリスクは、気にする人が非常に少ないというのが現状です。
後々大きな損失を抱えないためにも、ぜひ早めの対策を打っていただければと思います。
次回は最終回です。知的財産権のリスク管理の続きとして、知的財産権にかかる費用についてお伝えします。
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