こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
連載「知的財産で売上UP!活用法&リスク管理法」 、今回は前回に続いて、知的財産権のリスク管理についてお伝えします。
今回のリスク管理の内容は、特許、商標、意匠(正確には特許権、商標権、意匠権)といった 知的財産権を取得する際にかかる費用のことを考えなければならないということです。
なお、著作権については、著作物を創作した時点で権利が自動的に発生するので、基本的に費用が生じることはありません。
知的財産権の取得にかかる費用とは
それではまず、それぞれの知的財産権の取得にかかるおおよその費用について見ていきます。
取得にかかる費用とは、申請(出願)、特許庁の審査官による審査、審査結果に対する反論、登録などにかかる合計の費用です。
なお今回は、知的財産権の取得のための手続きを、すべて弁理士に依頼するという前提で考えます。
特許、商標、意匠の取得にかかる費用はおおよそ以下のようになります。
特許:50~100万円前後
商標:5~15万円前後
意匠:15~25万円前後
また、知的財産権の取得にかかる費用に加えて、維持費用もかかります。 特許の場合は、年数が経つにつれて維持費用が高くなっていくという特徴があります。
維持費用の詳しい数字は、特許庁のページ(※)に記載されています。
※特許庁 産業財産権関係料金一覧
特許庁による審査に落ちるリスクとは
上述したように、知的財産権の取得や維持にはそれなりに費用や時間がかかるため、その費用や時間が無駄になってしまう場合のリスクを考えなくてはなりません。
そのリスクとは、特許、商標、意匠などの登録を受けるための申請(出願)をして、特許庁による審査に落ちてしまうことです。
つまりは、知的財産権を取得できなかった場合のことです。
特許庁による審査の項目はたくさんあり、どれかしらに引っかかってしまうと、審査を通過できずに拒絶理由を通知されてしまいます。
さらにその拒絶理由に対して、それを解消するための反論あるいは補正という手続きによる対応が成功しなければ、基本的に権利を取得することができません。
申請をした内容、弁理士の実力、特許庁の審査官によって、審査を通過できるかが分かれてくるのですが、通過できないケースもそれなりにあります。
特許庁による審査の通過率はどのくらい?
ここで、参考として一般的な審査の通過率、すなわち登録率がどれぐらいかどうか、特許、商標、意匠について見ていきたいと思います。
まず、特許の登録率ですが、およそ7割ほどです。
意外と高いと思う方が多いのではないでしょうか?
以前はもう少し登録率が低かったのですが、近年の状況の変化によりだんだん高くなっていきました。
ただ、それでも3割ぐらいは登録にならないので、その場合は50~100万円前後のお金や労力が無駄になってしまうことが多いです。
次に商標の登録率ですが、特許と同じく7割ぐらいです。
ただ商標の場合は、かかる費用が特許に比べてかなり安いので、もし失敗してもそんなに大きい損失ではありません。
続いて意匠の登録率ですが、特許や商標よりも登録率が高く、8割程度となります。
費用もそんなに高くはないので、比較的ローリスクとなります。
知的財産の登録率を高めてリスクを減らすには?
以上のように、知的財産権を取得するにあたっての登録率をお伝えしましたが、これらはあくまで参考として考えていただければと思います。
というのも、登録になるかどうかは、事前の調査によってだいたいわかるからです。
特許、商標、意匠などについて申請をする場合は、必ず事前の調査を行い、すでに同じものや似たようなものがないかを調査します。
同じものや似たものが世の中に存在する場合というのはそれなりに多いので、そのようなアイデアについては事前に調査を行うことで発見し、無駄な申請を行わないことが重要です。
すなわち、事前の調査を十分に行うことにより、費用や時間を無駄にしてしまうリスクを抑えることができるのです。
また、十分な事前調査により無駄な申請を減らすことに加えて、発見した関連アイデアとは差別化を図り、登録率を高めることが必要になります。
どういうことかといいますと、自分が知的財産権を取得しようとしているアイデアの内容が他人のアイデアと同じか似ている場合は、さらにアイデアに工夫を加えて違いを明確にする必要があります。
つまり、自分のアイデアが他人のアイデアと同じか似ている場合に、知的財産権の取得をすぐに諦めてしまうのではなく、さらに工夫を加えて登録になるようにしていくことも検討すべきです。
このように、調査によって無駄をなくしつつ、どうやったらより良いアイデアを生み出せるか考えることが必要になります。
連載「知的財産で売上UP!活用法&リスク管理法」 、今回は、特許、商標、意匠等について登録のための申請を行うにあたり、審査に落ちて知的財産権を取得できない場合のリスクを減らす必要があるということをお伝えしました。
知的財産権の取得を目指すにあたっては、極力費用を無駄にしないことを念頭に置くとご理解いただけましたでしょうか。
知的財産権の取得を検討する際はぜひ参考にしていただければと思います。
本連載をお読みいただきありがとうございました!
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