「恋愛簿記~男と女の会計学~(全12回)」の第7回をお送りします。
前回は「費用の認識」についてでしたが、今回は「減価償却」について、恋愛に例えながら考えてみましょう。
「減価償却」とは
「減価償却」とは、費用配分の原則に基づいて、有形固定資産の取得原価をその耐用期間における各事業年度に費用として配分することをいいます。
どういうことかといいますと、有形固定資産(例えば300万円で取得した車)は1年こっきりではなく、複数年度(例えば3年間)に渡って使っていくものですから、いきなり1年で300万円の経費を計上するのではなく、1年に100万円ずつ費用を振り分けましょうということです。
その結果、車の価値は100万円ずつ減っていって、3年目には0となるわけです。
【仕訳(購入時)】
車両300/現金300
【仕訳(決算時)】
減価償却費100/車両100
恋愛や結婚もそうですね。1年こっきりのお付き合いではなく、複数年度に渡って収益の効果を及ぼすものです。恋愛スタート時に注いだ愛情を「資産」と考えると、有形固定資産のような取扱いができそうです(愛のカタチは追求していくものですから有形とします!)。
この時点で問題となるのは、どのような方法で減らしていくかということです。さて、愛はどう減るのでしょうか?
ケース1.「定額法」
簿記3級では「定額法」を学習します。これは先ほどの車の例のように、耐用年数で割り算をして、毎期均等額で控除していく方法です。仮に恋愛スタート時に300の愛情があり、3年で0になる(別れる)としましょう。
【仕訳(決算時)】
愛情償却費100/愛情100
分かりやすいですね。しかし、愛が均等に減るとしたら、少々味気ない感じもします。
ケース2.「定率法」
最初はバーッと熱く盛り上がって、一気に冷めて、それからは惰性でダラダラ付き合い、そのうち別れる・・・。そんな若い子にありがちなパターンは、2級で学ぶ「定率法」です。こちらは、毎期首の未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法です。
仮に償却率を50%とすると・・・300に50%を乗じて
【仕訳(第1期末)】
愛情償却費150/愛情150
次の期末は300-150(第1期末の償却額)の「残り150」に50%を乗じて
【仕訳(第2期末)】
愛情償却費75/愛情75
このように、定率法は初年度に一気に償却されるところに特徴があります。しかし0に近づくにはそれなりの時間がかかりそうですね。
ケース3.「生産高比較法」
もう一つ、簿記2級には「生産高比例法」といって、車ならば走ったキロ数に応じて償却していくという方法があります。限度のキロ数(例えば20万km)を決めておいて、たくさん走った年(例えば12万km)は、たくさん償却する(12÷20×100=60%)計算方法ですね。しかし、これも愛に例えるとなんだか残酷ですね・・・
【仕訳】
愛情償却費×××/愛情×××(×××は相手に尽くした分だけ計上)
別れの言葉には「私、もうあなたに尽くすのに疲れたの・・・」というセリフが入りそうです。
このテーマ、なんだか暗いですね~。しかし、ご安心ください。減価償却の本質は「資産価値を減らす」ところにあるのではありません。もう一度このコラムの最初を読んでください。減価償却とは、「費用配分の原則に基づいて」「各事業年度に費用として配分すること」です。ポイントは「資産の費用化」です。
前回少し触れた「費用収益対応の原則」を思い出してください。費用と収益のタイミングのズレを調整し、両者の対応関係を図ることでしたね。この前提にあるのは、費用(努力)は、収益(成果)の裏付けなのだということ。
つまり、恋愛前に発生した愛情(仮に「恋愛心」としましょう)は、年々償却(費用化)されていきますが、その代わり結婚などの次のステージに向けた愛情(仮に「結婚心」としましょう)が芽生えているのです。
恋愛スタート時に得た「恋愛心」を償却し切るまでに、それを超える「結婚心(夫婦の絆?)」を得ることができれば男女はきっとゴールインすることでしょう。
え?その後の夫婦の絆ですか?「100年の恋」ってくらいですから、100年かけてゆっくり償却していこうよ。(結婚情報誌のCMみたいですね・・・このコラム(笑))
次回は、「失恋引当金は計上可能か?」をお届けします。
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