「恋愛簿記~男と女の会計学~(全12回)」の第8回をお送りします。
前回は「減価償却」についてでしたが、今回は「貸し倒れ」について、恋愛に例えながら考えてみましょう。
「貸し倒れ」とは
「貸倒れ」とは、取引先の倒産などによって、売上債権(売掛金、受取手形)や貸付金が回収不能になることをいいます。
【仕訳(貸倒れ時)】
貸倒損失100/売掛金100
将来回収不能となる可能性が高い場合、貸倒れとなる金額をあらかじめ見積もったうえで、決算時点において「貸倒引当金」を計上します。
ねらいは、これまでにも取り上げた「適正な期間損益計算」のためです。
貸倒れの発生原因は、言うまでもなく売掛金が生じたことによるものであるため、原因となる売掛金の発生年度(つまり売上=収益のあった年)に引当金繰入額(=費用)を計上することで、適正な期間損益計算が可能となります。
【仕訳(決算時)】
貸倒引当金繰入額100/貸倒引当金100
【仕訳(貸倒時)】
貸倒引当金100/売掛金100
引当金には、貸倒引当金以外にも、修繕引当金(根拠:未来の修繕の原因は今期の使用)や製品保証引当金(根拠:未来の修理保証の原因は今期の販売)など様々なものがあります。
失恋にも「貸倒引当金」は計上できる?
では、どんなものでも引当金は計上できるのでしょうか?たとえば、このコラムで散々取り上げている失恋について「失恋引当金」なんてのも計上可能だったりするのでしょうか?考えてみましょう。
恋愛成就にはたくさんのお金や愛情を注ぐ必要があります。キャバクラでお目当ての嬢に貢ぐのも「債権」を発生させていると考えてよいでしょう(少々強引ですが)。
【仕訳(プレゼント時)】
恋愛債権100万円/貴金属100万円
しかし残念ながらこの債権が回収できず(=恋愛が成就せず)、貸倒れになってしまうこともしばしばです。
【仕訳(連絡が取れなくなった時)】
貸倒損失100万円/恋愛債権100万円
そこで、恋愛債権の発生年度(つまり貴金属を貢いだ時)に引当金を計上したいところです。仮に貸倒れの確率を30%としましょう。
【仕訳(プレゼントをした年の年末)】
恋愛損失引当金繰入額30万円/恋愛損失引当金30万円
これならば、貸倒れたときのダメージも少なくて済みそうです。
【仕訳(連絡が取れなくなった時)】
貸倒損失70万円/恋愛債権100万円
恋愛損失引当金30万円
引当金の4要件とは
しかしながら、引当金は何にでも計上できるわけではなく、要件として以下の「4要件」を満たしていなければなりません。
①将来の特定の費用または損失
②その発生が当期以前の事象に起因
③発生の可能性が高い
④その金額を合理的に見積もることができる
どうでしょうか。①は間違いないですね。恋愛が始まる前から失恋する人はいませんので、将来の損失です。しかしながら②③④については異論も飛び出すでしょう。
②については、「来期以降の失恋の原因は、当期に恋愛を始めたことだ」と言うことになってしまいます。そんなニヒリストな恋愛って悲しいですよね・・・。
③についても異論のあるところです。失恋の可能性は高いと見るか低いと見るか・・・難しいところですよね。みんな「100%成就する」と信じて、相手に貢ぐのですから。
神社の絵馬を見てください「○○ちゃん一生幸せにするよ」「▲▲くん絶対幸せになろうね」な~んて(恐ろしい?)絵馬がたくさん飾ってあります。
④についても難しいでしょう。貢いだお金を帳簿に付けていればよいですが、お金以外の手間や時間、キャバクラでの酒代などは少々難しいところです(本命の子ではなくヘルプの子も付いたりしますし・・・これは債権として計上してよいのやら・・・?)。
結論:恋愛損失引当金の計上は…
ということで、恋愛損失引当金の計上は少々難しいような気がいたします。っていうか、最初からこんな考えで恋愛を始めちゃダメですし、キャバクラだって楽しめませんよね。
話は変わりますが、世の中の男女って、「恋愛は100%うまくいく」のが前提となってしまっている気がします。だからこそ、「あの観覧車に乗ったカップルは別れる」なんてジンクスが飛び出すんです。でも、世の中のカップルは、最後まで成就する確率の方がゼロに近いですよね。
「乗ったカップルは100%別れられない観覧車」の方が、ある意味怖い・・・。やっぱり恋愛には「貸倒れ」が折り込み済みなのかもしれません。
次回は、「パートナーの保有目的で変わる評価方法」をお届けします。
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