友人のオンスク君から「独立して会社を経営しようとする同僚のA氏から、出資をしてくれないかとの申し出を受けたのだけれども、手持ち金があまりないから、死んだ親父から相続した土地を出資しようと思うんだが、どうかな?」との相談。あなたなら、どう答えますか?
皆さん、こんにちは。前回はビジネス実務法務検定試験 ®2級の出題内容や出題傾向等について概要を説明しましたが、今回から、70点を取るための、出題分野ごとの具体的な勉強法についてお話をしていきます。
今回の第2回では、前回お話しした出題分野のうち「①企業活動における取引の主体」についての勉強法をご説明します。
1. 「企業活動における取引の主体」の出題内容・配点
この分野の出題内容は、企業活動における主な取引主体である株式会社の仕組みや運営等です。大別して、
① 株式会社の基本的な仕組み
② 株式会社の設立
③ 株式
④ 会社の機関
⑤ 計算
⑥ 会社の資金調達
⑦ 企業結合
⑧ 解散・清算・会社の継続
の8項目から成り立っています。
この分野からは、配点にして15点から20点程度の出題となっています。
2. 「企業活動における取引の主体」の出題傾向
出題頻度の高い項目は、前記のうちの②株式会社の設立、③株式、④会社の機関、⑦企業結合です。
3. 「企業活動における取引の主体」の勉強法
① 株式会社の設立
この項目については、定款の記載事項(特に、変態設立事項である現物出資と財産引受け)、発起人・擬似発起人の責任が重要です。
② 株式
この項目については、株主平等の原則、単元株制度、定款による株式譲渡制限、自己株式の取得制限が重要です。
株主平等の原則、定款による株式譲渡制限、自己株式の取得制限を勉強する際には、「公開会社」と「非公開会社」の違い、「取締役会設置会社」と「取締役会非設置会社」の違いを常に意識することが大切です。
例えば、株主平等原則の例外として、非公開会社は、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権について、株主ごとに異なる取扱い(持株数にかかわりなく、株主全員の配当を同額としたり、株主1人につき1議決権としたりする等)を行う旨を定款で定めることができます。
これに対し、公開会社では、このような取扱いをすることはできません。
また、定款で株式の譲渡が制限されている場合の株式譲渡の承認機関は、取締役会非設置会社にあっては原則として株主総会となりますが、取締役会設置会社にあっては原則として取締役会となります。
そして、取締役会設置会社は、定款の規定に基づき、取締役会決議で市場取引または公開買付けにより自己株式を取得することができます。
試験では、このような違いが好んで出題されますので、注意してください。
③ 会社の機関
この項目については、株主総会、取締役・取締役会、監査役・監査役会が重要です。
これらを勉強する際にも、「公開会社」と「非公開会社」の違い、「取締役会設置会社」と「取締役会非設置会社」の違いを常に意識することが大切です。
例えば、株主総会の招集の決定は、取締役会非設置会社では、原則として取締役が行いますが、取締役会設置会社では、原則として取締役会が行います。
また、株主総会の招集通知を発する期間については、公開会社の場合には、必ず、会日(株主総会の日)の2週間前までに招集通知を発する必要がありますが、非公開会社の場合で、書面または電磁的方法による議決権行使の定めがないときは、会日の1週間前までに招集通知を発すれば足ります。
取締役の人数については、取締役会設置会社の場合には、3人以上でなければなりませんが、取締役会非設置会社の場合には、1人でも足ります。
また、取締役会設置会社の場合には、必ず、代表取締役を選定しなければなりませんが、取締役会非設置会社の場合には、代表取締役の選定は任意とされています。
そして、取締役が競業取引または利益相反取引をする場合の承認機関は、取締役会設置会社の場合には、取締役会ですが、取締役会非設置会社の場合には、株主総会となります。
④ 企業結合
この項目については、合併と事業譲渡が重要です。合併と事業譲渡は、交互に出題される傾向があります。例えば、前回の試験で合併が出題されたならば、今回は事業譲渡が出題されるという感じです。
合併については、新設合併と吸収合併の違い、合併契約の承認の手続(通常の手続、特殊決議が必要となる場合、簡易合併、略式合併)が特に重要です。
事業譲渡については、事業の全部譲渡の場合と事業の重要な一部の譲渡の場合のそれぞれにおける承認手続の違い、特則(簡易な事業の譲渡・譲受け、略式事業譲渡・譲受け)が特に重要です。
ところで、冒頭のオンスク君の相談についてですが、ビジネス実務法務2級試験合格者のあなたなら「現物出資は、会社設立時は発起人しかできないから、オンスク君が発起人に加わらない限り、それは無理だね。」と答えることでしょう。
次回は、ビジネス実務法務2級の試験科目のうち「各種の会社をめぐる法律関係」の勉強法についてお話をします。
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