「地元の電器屋で買ったばかりのパソコンがもう故障してさぁ。頭にきたから、メーカーに製造物責任を追及して損害賠償をしてもらおうと思うんだけれど。」と友人のオンスク君からの相談。あなたなら、どう答えますか?
皆さん、こんにちは。この連載では、ビジネス実務法務検定試験®2級で70点を取るための具体的な勉強法についてご説明しています。
前回は「企業活動における取引の主体」の勉強法についてお話をしました。今回は、「各種の会社をめぐる法律関係」の勉強法についてお話をします。
1. 「各種の会社をめぐる法律関係」の出題内容・配点
この分野の出題内容は、会社が主体となって行う様々な契約の内容、その契約等の企業活動において生じた損害賠償に関する法律関係です。大別して、
① ファイナンス・リース契約
② 請負を基礎とする契約
③ 委任を基礎とする契約
④ 寄託契約
⑤ 業務提携契約
⑥ 電子商取引
⑦ 企業活動における損害賠償に関する法律関係
の7項目から成り立っています。
この分野からは、配点にして10点前後の出題となっています。
2. 「各種の会社をめぐる法律関係」の出題傾向
出題頻度の高い項目は、前記のうちの②請負を基礎とする契約、③委任を基礎とする契約、④寄託契約、⑥電子商取引、⑦企業活動における損害賠償に関する法律関係です。
中でも、③委任を基礎とする契約と、⑦企業活動における損害賠償に関する法律関係からは毎回出題されています。
3. 「各種の会社をめぐる法律関係」の勉強法
① 請負を基礎とする契約
この項目については、「請負契約」が重要です。請負契約については、「請負人の担保責任」の内容として、従来は、建設工事請負契約においては認められていなかった建物の欠陥を理由とする契約の解除が、平成29年成立の改正民法により認められることになったなど、多くの重要な改正がなされており、特に重点的に勉強する必要があります。
② 委任を基礎とする契約
この項目については、「代理商」と「仲立人」が重要です。この代理商と仲立人は、毎回の試験において、いずれかが交互に出題される傾向があります。例えば、前回の試験で代理商が出題されたならば、今回は仲立人が出題されるという感じです。
ご自分が受験される回の前の回において、どちらが出題されたかを確認することで、無駄のない効率的な勉強をすることができます。
代理商も仲立人も範囲が狭く、また、過去に出題された箇所を押さえれば、確実に得点できるテーマですから、ぜひ得点源としてください。
③ 寄託契約
寄託契約も、平成29年成立の改正民法により、「要物契約」から「諾成契約」に変更されるなどの重要な改正がなされています。この項目については、まず、従来から出題の多い「倉庫寄託契約」をしっかりと勉強してください。
④ 電子商取引
この項目については、「電子消費者契約法」が特に重要です。電子商取引において消費者に錯誤があった場合、一定の要件のもとで契約の「取消し」が認められていますが、この点も平成29年成立の改正民法の影響を受けている箇所です。
⑤ 企業活動における損害賠償に関する法律関係
「各種の会社をめぐる法律関係」の中でもっともボリュームのある項目です。この項目については、「使用者責任」、「工作物責任」、「運行供用者責任」、「製造物責任」が特に重要です。
本項目については、平成29年成立の改正民法により、「人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権」について、消滅時効の期間を「3年」から「5年」に延長する改正がありました。
使用者責任と工作物責任は、民法上の不法行為にもとづく損害賠償責任ですが、運行供用者責任は、自動車損害賠償保障法(自賠法)上の損害賠償責任であり、製造物責任は、製造物責任法上の損害賠償責任となっています。
民法上の不法行為にもとづく損害賠償責任は、加害者に故意または過失があることを要件とする「過失責任」ですが、製造物責任は、故意または過失を要件としない「無過失責任」であり、運行供用者責任も実質的に無過失責任となっています。
本項目を勉強するときは、上記のような違いを意識しながら、「損害賠償責任が成立するための要件」を押さえることが必要です。ここが「試験で聞かれる」ところですから。
ボリュームのある項目ですが、毎回出題されている項目ですので、しっかりと勉強してください。
ところで、冒頭のオンスク君の相談ですが、ビジネス実務法務2級試験合格者のあなたなら「メーカーに製造物責任を追及するためには、パソコンの欠陥によってオンスク君の生命、身体または財産に損害が生じたことが必要になるんだ。単にパソコンが故障しただけならば、製造物責任を追及して損害賠償をしてもらうことはできないよ。」と答えることでしょう。
次回は、ビジネス実務法務2級の試験科目のうち「会社財産の管理・運用」の勉強法についてお話をします。
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