オンスク君が勤める自動車メーカーA社の主要取引先である海運会社のB社が倒産し、A社内において、2日後の会議でB社の船舶に対する強制執行が喫緊の課題として検討されることになりました。あなたは、オンスク君にどのようなアドバイスをしますか?
皆さん、こんにちは。ビジネス実務法務検定試験®2級で70点を取るための具体的な勉強法についてご説明するこの連載も、今回が最終回となります。
前回は「企業活動をめぐる紛争の解決方法」の勉強法についてお話をしました。今回は、「国際法務に関する法律」の勉強法についてお話をします。
1. 「企業活動をめぐる紛争の解決方法」の出題内容・配点
この分野の出題内容は、国際法務(渉外法務)です。大別して、
①国際取引契約
②国際商事紛争
③アメリカの司法体系・裁判手続
④国際倒産
の4項目から成り立っています。
この分野からは、配点にして3点前後の出題となっています。
2. 「国際法務に関する法律」の出題傾向
この分野については、国際商事紛争(国際裁判管轄、準拠法、外国判決の執行等)からの出題がもっとも多いので、これを重点的に学習する必要があります。
3. 「国際法務に関する法律」の勉強法
① 国際取引契約
国際取引契約については、「確認文書」、「一般条項」、「インコタームズ」、「国際的な知的財産権保護のための条約」、「並行輸入」、「模倣品対策」、「WTO(世界貿易機関)」が重要です。
確認文書については「必ずしも、法的拘束力がないわけではないこと」を押さえてください。
一般条項については、「完全合意条項」と「国際裁判管轄条項」がよく出題されています。完全合意条項については、その意味のほかに、英米証拠法上のルールである「口頭証拠排除原則」を再確認するものであるという点も押さえる必要があります。国際裁判管轄条項については、必ずしも、その条項の内容に従って裁判管轄が認められるわけではないことに注意する必要があります。
インコタームズについては、これは条約ではないこと、当然には法的な強制力(拘束力)を有しないことに注意してください。この点は、過去の試験で何度も問われています。
国際的な知的財産権保護のための条約については、「工業所有権の保護に関するパリ条約(パリ条約)」、「特許協力条約(PCT)」、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(ベルヌ条約)」が重要です。各条約がどのような内容を規定しているのかを押さえてください。
並行輸入については、その意味のほかに、我が国の判例が、特許権に基づき当該並行輸入を阻止することは原則としてできないとしている点を押さえてください。
模倣品対策については、関税法による輸入禁制品の輸入差止めが重要です。関税法上、知的財産権を侵害する物品は、輸入禁制品として扱われており、当該輸入禁制品の輸入差止めについては、税関当局の職権によりなされるほか、当該知的財産権の権利者による輸入差止めの申立てが認められているという点が、過去に複数回出題されています。
WTOについては、WTOの定める3つの基本原則(最恵国待遇の原則、内国民待遇の原則、数量制限の一般的廃止)の内容を押さえてください。
② 国際商事紛争
国際商事紛争については、例えば、「アメリカ企業であるA社と日本企業であるB社との間で、B社の製品の売買取引が行われたところ、同製品に欠陥がありA社が損害を受けたとして、アメリカにおいてA社がB社を被告として損害賠償請求訴訟を提起した」というような事例形式の問題が出題されます。
このような事例の場合、まず問題となるのは、「国際裁判管轄」の問題と「国際的訴訟競合」の問題です。国際裁判管轄については、最近の試験では、「日本の民事訴訟法が定める国際裁判管轄のルール」が問われることが多くなっています。
次に問題となるのは、「準拠法」の問題です。準拠法については、我が国の準拠法についてのルールを定める「法適用通則法」が「当事者自治の原則」を採用していること、紛争当事者間の合意がない場合には「最密接関係地法」が準拠法となることを押さえてください。
そして、その次に問題となるのは、「外国判決の執行」という問題です。外国判決の執行については、「執行判決を得る要件」を押さえてください。要件では、「日本の民事訴訟法118条が規定する4つの要件」から多く出題されています。
国際商事紛争については、上記に挙げた項目のほかに、訴訟によらない紛争解決方法としての「仲裁」からもよく出題されます。仲裁については、仲裁合意の要件・効力を中心に押さえてください。
③ アメリカの司法体系・裁判手続
アメリカの司法体系・裁判手続については、「ロング・アーム法」と「ディスカヴァリー」を押さえてください。
④ 国際倒産
国際倒産とは、海外に資産のある日本企業が倒産した場合、その海外資産に対して日本の債権者や外国の債権者が強制執行することができるかという問題です。
例えば、海運業を営む日本企業であるA社が倒産した場合、日本国外で就航しているA社の船舶に対して、A社の債権者が差押えその他の強制執行をすることができるかという問題です。
国際倒産については、「属地主義」と「普及主義」のそれぞれの意味と、さらに普及主義については、その内容として、日本の破産法その他の倒産法がどのような規定を設けているのかを押さえてください。
ところで、冒頭のオンスク君へのアドバイスですが、ビジネス実務法務2級試験合格者のあなたなら「あまり時間がないが、会議に参加するための最低限の予備知識として、ビジ法2級のテキストで、“国際倒産”の箇所を一通り勉強しておくこと。余裕があれば、“普及主義”に関する条文に当たっておくのもいいだろう。これを機会に2級試験を受けることもすすめておくよ。がんばれ。」というようなアドバイスをすることでしょう。
今回で「ビジネス実務法務2級の勉強法」の連載は終了となります。最後まで本連載をお読みいただきありがとうございました。
皆さんの2級試験合格を心よりお祈り申し上げます。
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