「今度“X”という店名でイタリアン・レストランを始めようと思うんだけれども、知人から“X”は商標登録されていて使えないと言われたんだ。でも、“X”を使った商品やサービスは、ここ5年間聞いたことがないんだよね。どうにかして“X”を店名に使えないものだろうか。」と困惑した表情のオンスク君。あなたなら、どうアドバイスをしますか?
皆さん、こんにちは。この連載では、ビジネス実務法務検定試験®2級で70点を取るための具体的な勉強法についてご説明しています。
前回は、「各種の会社をめぐる法律関係」の勉強法についてお話をしました。今回は、「会社財産の管理・運用」の勉強法についてお話をします。
1. 「会社財産の管理・運用」の出題内容・配点
この分野の出題内容は、預金、不動産、知的財産権(特許権、著作権等)等の会社財産の管理と運用をめぐる法律関係です。大別して、
①流動資産の管理・運用
②固定資産の管理・運用
③知的財産権の管理・運用
の3項目から成り立っています。
この分野からは、配点にして20点前後の出題となっています。
2. 「会社財産の管理・運用」の出題傾向
出題頻度の高い項目は、前記のうちの②固定資産の管理・運用と③知的財産権の管理・運用です。中でも、③の知的財産権のうち、特許権と著作権が重要で、両者は、毎回出題されています。
3. 「会社財産の管理・運用」の勉強法
① 固定資産の管理・運用
この項目については、買戻し特約、仮登記、処分の制限の登記、不動産に関する物権変動と登記が重要です。
② 知的財産権の管理・運用
知的財産権は、3級試験でも出題されますが、2級試験では、3級試験では聞かれないような細かい点も出題されています。
この項目については、まず、毎回出題されている特許権と著作権にしっかりと取り組んでください。「ほぼ100%出ること間違いなし!」と言えるテーマですから、俄然ヤル気も出ると思います。この両者については、テキストに書かれている内容のどこが出題されてもよいように、しっかりと準備をしておく必要があります。
■特許権のポイント
特許権については、2019年の特許法改正により、特許権の侵害の可能性がある場合、中立な技術専門家が、被疑侵害者の工場等に立ち入り、特許権の侵害立証に必要な調査を行い、裁判所に報告書を提出する制度が創設されました。
これは、重要な改正であり、今後の出題が予想されます。
また、改正により、①侵害者が得た利益のうち、特許権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスをしたとみなして、損害賠償を請求できることとされました。
そして、②ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たり、特許権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できることとされました。この②については、実用新案権、意匠権および商標権においても同様の改正がなされていますので、要注意です。
そして、特許権の存続期間は、特許出願の日から20年とされていますが、この存続期間については、特許権の設定の登録が特許出願の日から起算して5年を経過した日または出願審査の請求があった日から起算して3年を経過した日のいずれか遅い日(基準日)以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができることとなった点にも注意してください。
■著作権のポイント
著作権についても、2018年の改正により、①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備、②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備、③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備、④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等がなされています。
例えば、他人の著作物を利用する場合であっても、①AIによる情報解析や技術開発など、著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用、②新たな知見や情報を創出することで著作物の利用促進に資する行為で、権利者に与える不利益が軽微である一定の利用を行う場合等については、著作権者の許諾を得ずに、当該著作物を利用できることされました。
このように、特許権と著作権は、改正の多いテーマですので、改正点を見落とすことがないように注意して勉強する必要があります。
■意匠権・商標権
特許権・著作権に次いで重要なのが意匠権と商標権です。意匠権と商標権は、毎回の試験において、いずれかが交互に出題される傾向があります。例えば、前回の試験で意匠権が出題されたならば、今回は商標権が出題されるという感じです。
ご自分が受験される回の前の回において、どちらが出題されたかを確認することで、無駄のない効率的な勉強をすることができます。
ところで、冒頭のオンスク君へのアドバイスですが、ビジネス実務法務2級試験合格者のあなたなら「商標法に“不使用取消審判”という制度があって、継続して3年以上、その“X”という商標を商標権者等が正当な理由なく使用をしていないときは、誰でも、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができ、これによって商標登録が取り消されれば、問題の“X”を使うことができるよ。」とアドバイスをされることでしょう。
次回は、ビジネス実務法務2級の試験科目のうち「債権の管理・回収と倒産処理」の勉強法についてお話をします。
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