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「債権の管理・回収と倒産処理」ビジネス実務法務2級の科目別勉強法⑤

「債権の管理・回収と倒産処理」ビジネス実務法務2級の科目別勉強法⑤

「アパートの大家さんが借金を返済しなかったため、このアパートが競売にかけられてしまい、買受人と名乗るX氏から“直ちに退去してもらいたい”と言われたんだけれど。」と心配顔のオンスク君。あなたなら、どう答えますか?

皆さん、こんにちは。この連載では、ビジネス実務法務検定試験®2級で70点を取るための具体的な勉強法についてご説明しています。

前回は、会社財産の管理・運用」の勉強法についてお話をしました。今回は、「債権の管理・回収と倒産処理」の勉強法についてお話をします。

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1. 「債権の管理・回収と倒産処理」の出題内容・配点

この分野の出題内容は、会社が取引の相手方に対して取得した債権の管理方法(抵当権・譲渡担保等の物的担保と保証等の人的担保)、債権の回収方法(債権譲渡・相殺・債権者代位権、仮差押え・仮処分、強制執行等)、および取引の相手方が倒産した場合の倒産処理手続(破産、会社更生、民事再生等)です。大別して、
①債権の管理
②債権の回収
③倒産処理
の3項目から成り立っています。

この分野からは、配点にして20点から25点程度の出題となっています。

2. 「債権の管理・回収と倒産処理」の出題傾向

この分野からは、ほぼ満遍なく出題されていますが、特に重要なのは、抵当権・譲渡担保・保証・債権譲渡・相殺・強制執行・破産手続です。これらは、ほぼ毎回出題されています。

また、債権者代位権詐害行為取消権・仮差押え・民事再生手続も重要です。抵当権・譲渡担保・保証・債権譲渡・相殺・強制執行・破産手続は、3級試験でも出題されますが、2級試験では3級試験よりもさらに「広くかつ深く」聞かれます。

この分野は、受験生の皆さんにとっては、おそらく一番難しいと感じられる分野であろうと思われます。また、ボリュームも相当あります。気合を入れて勉強してください。

3. 「債権の管理・回収と倒産処理」の勉強法

① 抵当権

抵当権については、物上代位法定地上権一括競売建物明渡猶予制度根抵当権が重要です。

抵当権については、「金融の円滑化」という観点から抵当権の効力の強化が図られる一方で、抵当不動産を利用する者との調整をいかにして妥当に図っていくかという観点があることを踏まえて、各項目を勉強することがこれをマスターする秘訣です。

② 譲渡担保

譲渡担保については、譲渡担保の設定譲渡担保の対抗要件譲渡担保の実行が重要です。

譲渡担保は実務上の必要性から生まれた制度であることを踏まえながら勉強すると、各項目を理解しやすくなると思います。

③ 保証

保証については、従来よく出題されている「連帯保証」のほかに、平成29年成立の改正民法により、「情報提供義務」や「事業にかかる債務についての保証契約の特則」など、保証人の保護のための制度が設けられたことに注意する必要があります。

④ 債権譲渡

債権譲渡についても、重要な改正がありました。譲渡制限特約に違反してなされた債権譲渡の効力について、改正前は、「無効」という扱いでしたが、改正民法は、これを原則として「有効」としたことに注意してください。また、「債権譲渡と相殺」についても重要な改正がなされています。

改正点以外では、「債権譲渡の対抗要件」が、その出題頻度が高く重要です。

⑤ 相殺

相殺についても、重要な改正があります。改正前は、「不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とする相殺」が例外なく禁止されていましたが、改正民法は、禁止の対象を「悪意による不法行為に基づく損害賠償債権」と「人の生命または身体の侵害による損害賠償債権」に限定しました。

⑥ 強制執行

強制執行については、まず、「債務名義」と「強制執行の目的物」を押さえてください。

これらを勉強したならば、次は、「配当手続」を押さえてください。配当手続は、非常に難しく、テキストやオンスクの講義を1回読みまたは聴いた程度では理解できない項目ですから、くれぐれも「自分は頭が悪い」などと落ち込まないでください。辛抱強く勉強することです。

⑦ 破産手続

破産手続は、「手続の流れ」を押さえながら勉強することが、これをマスターする秘訣です。今、自分が勉強している項目は、手続の中のどのあたりの話なのかということを意識しながら勉強してください。

項目としては、「破産原因」、「破産手続開始決定の効力」、「破産手続開始決定前からの未解決の法律関係」からの出題が多いです。

⑧ 仮差押え

仮差押えについては、「仮差押えの効果」を押さえてください。

⑨ 債権者代位権

債権者代位権については、「債権者代位権の要件」と「債権者代位権の行使の方法」が特に重要です。

また、判例は、債権者が債権者代位権の行使に着手した場合、これを債務者に通知するか債務者が了知した後は、債務者は、被代位権利の取立てその他の代位権行使を妨げるような処分をする権限を失うとしていましたが、平成29年改正民法は、このような判例の見解を改めて、債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられないとしたことにも注意してください。

従来の判例の見解を変更するような改正は、きわめて重要であり、試験に出る可能性も高いといえます。

⑩ 詐害行為取消権

詐害行為取消権については、ここでは載せきれないほどの多くの改正がありました。「債権者代位権と共通する点はどこか」、「違う点はどこか」という視点で勉強すると理解が進みます。

⑪ 民事再生手続

破産手続の場合と同様に、「手続の流れ」を押さえながら勉強することが、民事再生手続をマスターする秘訣です。

ところで、冒頭の困り顔のオンスク君に対しては、ビジネス実務法務2級試験合格者のあなたならば「直ちに退去する必要はないよ。君には、6ヵ月間はそのアパートに住み続ける権利があるから、X氏なる人物に対しては、“おとといきやがれ!”とでも言って追い返すんだね。」と答えることでしょう。

次回は、ビジネス実務法務2級の試験科目のうち「企業活動に関わる法規制」の勉強法についてお話をします。

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