こんにちは。オンスク行政書士講座、担当の藍澤です。
連載「時事問題で学ぶ行政書士試験」では、ニュースの中から行政書士受験生に役立つものを取り上げ、学習のポイントを解説していきます。今回も、行政書士試験のメイン科目である「行政法」からです。
時事ネタですので、もちろん行政書士受験生以外の方でも興味を持っていただけると思います。よろしければぜひご覧になってください。
本日取り上げる時事問題は「セクハラ疑惑(地方議会と長の関係)」です。
群馬県みなかみ町長は、2018年7月に議会から不信任議決を受けたため、翌月に議会を解散。選挙後初めての議会で、2度目の不信任議決がなされ、2018年9月18日に失職しました。
「不信任議決」とは、「長を信用して任せることができない」という「議会の意思表示」です。
この町長は飲み会の席で、関係者の女性にセクハラ行為をしたことで、警察へ被害届を提出されました。これを受けてみなかみ町議会は、町長の不信任議決を可決しました。
地方議会で長の不信任議決が可決された場合、長は「辞任」か「議会の解散」のどちらかを選ばなければいけません。
町長は「双方の合意の上の行為だった」とセクハラ行為を認めず、「議会の解散」を選びました。
今回のように議会に責任がない場合、長は「議会の解散」ではなく「辞任」を選ぶことが多いです。
「議会の解散」を選ぶと、議員は失職しますので、選挙をしなければいけません。選挙には時間もお金もかかりますし、その間議会がストップしてしまいます。
みなかみ町も、この選挙中の行事を中止しなければなりませんでした。
また今回のようなケースでは、選挙後に初めて招集される議会で再度「長の不信任議決」がなされます。
選挙をして住民の意見を聞いても、議員には責任がないので、ほとんど同じ議員が戻ってくることが考えられます。
同じ議員で再度不信任議決をしても、同じように可決され、結局は長が失職することになるので、意味がありません。
このように、セクハラ行為の真偽は分かりませんが、
既婚者である町長のそのような行為が発覚したこと
「辞任」ではなく「解散」を選んだこと
が、世間の批判を集めることになりました。
行政書士受験生 注目ポイント
地方公共団体の「長」と「議会」の関係は、国政の「国会」と「内閣」の関係とは違います。
前者の場合、私たち住民が「長」と「議会の議員」を直接選挙で選ぶので、原則「長」と「議会」は対等です。
そのため、「長」と「議会」の間で問題が起こった場合、解決するための制度が「地方自治法」には用意されています。「不信任議決・解散」はその1つです。
「議会」が「長を信用して任せることができない」と思ったら、「不信任議決」をすることができます(地方自治法178条)。受験生は、数字と流れをしっかり覚えましょう。
また、「内閣の不信任決議の流れ」と違うので、ひっかけ問題が出る可能性があります。しっかりと違いを理解しておきましょう。
内閣の不信任決議が可決し、解散総選挙がされても、初めて招集される議会で「再度の不信任の議決」はありません。
また、解散総選挙後に初めて招集される議会を「特別会」ということも一緒に覚えましょう(憲法54条)。
行政書士受験生 注目ポイント まとめ
長の不信任議決の流れ(地方自治法178条)を説明できるようにしましょう。 内閣の不信任決議の流れ(憲法69条)との違いを理解しましょう。
町長は「セクハラはしていない。」「町長を続けたい。」という気持ちから、解散を選んだと思います。
ですが、町長を続けたいのであれば、自ら辞任して、町長選挙で再出馬をして住民の民意を問うことができたはずです。
選挙は民意を問う意味があります。当選した人を見れば、住民や国民が望んでいることがわかりますよね。
長の不祥事によって、争点もないのに議員の選挙をしても、住民は困ってしまいますね。そして、最初から町長が辞職を選ぶのと同じ結果になってしまったのでは、お金と時間の無駄遣いだと思います。
長にも主張したいことがあると思いますが、やはり住民や他の執行機関のことも考えた選択がされるといいですね。
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