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「ネットいじめ加害者情報開示命令」時事問題で学ぶ行政書士試験

「ネットいじめ加害者情報開示命令」時事問題で学ぶ行政書士試験

こんにちは。オンスク行政書士講座、担当の藍澤です。

連載「時事問題で学ぶ行政書士試験」では、ニュースの中から行政書士受験生に役立つものを取り上げ、学習のポイントを解説していきます。今回は、行政書士試験の科目の1つである「一般知識」からです。

時事問題ですので、もちろん行政書士受験生以外の方でも興味を持っていただけると思います。よろしければぜひご覧になってください。

本日取り上げる時事問題は「ネットいじめ加害者情報開示命令」です。

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本日の時事問題「ネットいじめ加害者情報開示命令」時事問題で学ぶ行政書士試験

2018年12月10日、東京地裁は、インターネット接続会社3社に対し、インターネット掲示板に、当時中学生だったAさんの誹謗中傷を書き込んだ匿名の投稿者(加害者)の情報を開示するように命じる判決を下しました。

2015年4月、中学校に入学したAさんは、同級生や先輩から暴力を受け、悪口を言われるようになりました。
そのいじめは学校内だけでなく、LINEのトーク内にもおよび、「しねかす」「ごみおつ」といった書き込みがされるようになりました。
また、インターネットの掲示板にも、匿名の投稿者によってAさんの実名や誹謗中傷が書き込まれました。

Aさんは自殺未遂や不登校を繰り返し、Aさんの母親は匿名の投稿者を特定するために、インターネット接続会社3社に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、加害者の情報開示を求める裁判をおこしました。
これに対し、東京地裁は、加害者の情報を開示するよう命じました。

行政書士受験生 注目ポイント

行政書士受験生が注目すべきポイントは「プロバイダ責任制限法」です。

プロバイダ責任制限法は、インターネット上の誹謗中傷や名誉棄損が増加したことを受けて、2001年11月に制定され、2002年5月に施行されました。

それまでは、インターネット上で被害を受けても、その多くが匿名の投稿者によってされるため、話し合うことも、損害賠償請求することもできませんでした。
また、個人でインターネット接続会社に情報の開示を求めても、要求に応じる会社は多くありませんでした。

そこで、「プロバイダ責任制限法」では、被害者とプロバイダを守るために、大きく2つのことを規定しています。

1 プロバイダの損害賠償責任を制限

まず1つ目は、「プロバイダの損害賠償責任を制限」していることです。

プロバイダの中には、しっかりと防止策をとっている会社もあります。いつでもプロバイダが損害賠償責任を負う、としてはかわいそうです。

そこで、同法は防止策をとっているプロバイダは、原則、損害賠償を負わないと定めています。

例えば、Xさん(加害者)が、インターネット上で、Yさん(被害者)の誹謗中傷を書き込んだ場合を考えてみましょう。

プロバイダは、Yさん(被害者)に対して、原則、損害賠償責任を負いません。

例外として、
① Yさんへの権利侵害を防止することが技術的に可能であり、Yさんへの権利侵害を知っていたとき
または
② 情報の流通を知っており、Yさんへの権利侵害を知ることができたとき
は、損害賠償責任を負います。

また、プロバイダが情報の送信防止策(投稿された内容の削除措置)を講じていた場合は、Xさん(加害者)に損害が生じたとしても、プロバイダはXさんに対して、原則、損害賠償責任を負いません(例外で負う場合もあります)。

2 プロバイダへの発信者開示請求を認める

次に2つ目は、プロバイダに対する「発信者の開示請求」を認めていることです。

交通事故や暴力で損害賠償請求をするときは、加害者を特定することは容易です。
しかし、インターネット上の誹謗中傷が原因で体調を崩したり、命が奪われた場合、加害者に対して損害賠償請求をしたくても、加害者を特定することができません。

そこで、同法は、
① 侵害情報によって開示請求をする者(被害者)の権利が侵害されたことが明らかであって、
② 発信者情報が損害賠償請求権行使のために必要である場合、その他正当な理由がある場合

は、被害者のプロバイダに対する「発信者情報の開示請求」を認めています。

行政書士受験生 注目ポイント まとめ
プロバイダ責任制限法とはどんな法律か理解しましょう。 被害者とプロバイダを守るための規定を2つ覚えましょう。

いつの時代もいじめは問題になってきましたが、最近はSNSやインターネット掲示板のいじめが増えているそうです。

“表現の自由と言われても、実名では周りの目が気になって恥ずかしい”と思っていた人にとっては、匿名で自由に自分を発信できる時代になりました。
ですが、自由に表現できるようになった分、簡単に誹謗中傷をすることもできてしまいます。

今回の事件の発信者は、被害者Aさんの同級生など未成年である可能性が高いです。もしかしたら、罪の意識はなく軽い気持ちだったかもしれません。
それでも、Aさんは死ぬことを本気で考え、高校生になった今もPTSDに苦しんでいます。

インターネットが生活に不可欠となったこの時代、もう、子供たちをインターネットの世界から遠ざけることは難しいですよね。
インターネットと一緒に成長していく子供たちのために、今回の判決がネットいじめの抑止力となるといいですね。

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