こんにちは。オンスク行政書士講座、担当の藍澤です。
連載「時事問題で学ぶ行政書士試験」では、ニュースの中から行政書士受験生に役立つものを取り上げ、学習のポイントを解説していきます。 今回は、行政書士試験科目の「憲法」と「一般知識」からです。
時事問題ですので、もちろん行政書士受験生以外の方でも興味を持っていただけると思います。よろしければぜひご覧になってください。
本日取り上げる時事問題は「改正出入国管理法成立」です。
2018年12月8日未明、改正出入国管理法が参議院本会議で可決されました。
これによって、日本の深刻な人手不足を解消するために、2つの在留資格を新設し、外国人の受け入れが拡大されることになりました。
外国人が、日本で一定期間以上、お給料をもらって仕事をするためには、「在留資格」が必要です。厳密には意味が違いますが、「ビザ」とも呼ばれています。
現在は、主に「就労ビザ」と「技能実習ビザ」と呼ばれるものがあります。
「就労ビザ」とは、就労系の在留資格の総称です。教授、コック、通訳者、会計士、経営者、エンジニアなどの資格があります。
就労ビザを取得するためには、学歴要件や職務経験要件をクリアしなければいけません。
仕事内容も、いわゆる単純労働は認められていないので、その外国人でなければできない高度で専門的な仕事でなければ資格を取得することができません。
これに対して、「技能実習ビザ」とは、「技能実習制度」で来日した外国人が取得します。
「技能実習制度」とは、外国人が報酬をもらいながら日本の技術を習得し、習得したスキルを母国に持ち帰り、母国の経済発展に貢献するという趣旨の制度です。
技能実習ビザは、就労系の在留資格とは違い、農業、とび職、食品加工工場、自動車整備工場等での作業も対象です。
技能実習制度は、今回の出入国管理法ではなく、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」で定められています。
今回の改正では、「特定技能1号」と「特定技能2号」という2つの資格が新設されることになりました。
「特定技能1号」は、最長期間が5年間で、家族を日本に呼び寄せることはできません。
「特定技能2号」は、より熟練した技能が必要ですが、家族を呼び寄せることもでき、更新を続ければ永住権の取得もできるようになるようです。
このように、2つの在留資格が新設されることは決定されましたが、詳しい要件や対象となる業種等は決まっていません。これから省令等で定められます。
一定の日本語や知識が要件となり、人手不足が深刻な、建設業界、介護業界、外食産業、農業等、14業種が候補となるようです。
行政書士受験生 注目ポイント
行政書士受験生が注目すべきポイントは「衆議院の優越」と「出入国管理法」です。
まず、憲法で「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」と定められているように、法律を作るのは国会です(憲法41条)。
日本は二院制をとっているので、国会は「衆議院」と「参議院」からなっています(42条)。
基本、衆議院と参議院は対等ですが、衆議院には解散があること、参議院よりも任期が短いことから、より強い権限が衆議院に認められているものがあります。これを「衆議院の優越」といいます。
「法律案の議決」も衆議院の優越が認められています。
受験生は、憲法59条の流れを覚えましょう。
衆議院で「可決」、参議院で「否決」または「60日間放置」
↓
両院協議会を開くことができる
↓
(それでも意見がまとまらない場合)
衆議院で再議決し、出席議員の3分の2以上で可決
↓
法律になる
という流れです。
今回の改正案は、衆議院に先に提出されましたが、予算のように先議権はありません。法律案は、衆議院に先に提出する必要はないことに注意しましょう。
そして、両院協議会を開くかは任意です。「予算(60条)」「条約(61条)」「内閣総理大臣の指名(63条)」は必要的開催なので、注意しましょう。
行政書士受験生 注目ポイント まとめ
衆議院に優越が認められている4つの流れと相違点を覚えましょう。 技能実習制度について説明できるようにしましょう。 新しい在留資格に注目しておきましょう。
私の事務所でも最近は、日本人、外国人問わず、新しい在留資格の問い合わせをたくさん受けるようになりました。
経営者の方々も、「今がチャンス」「儲けたい」と口々に言っています。私たち行政書士にとっても、大きなビジネスチャンスになるかもしれません。
ただ、この混乱期を狙って悪いことを考える人がでてくることも考えられます。2019年4月に施行されるので、あまり時間がありませんが、しっかり勉強してその時に備えたいですね。
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