こんにちは。オンスク行政書士講座、担当の藍澤です。
連載「時事問題で学ぶ行政書士試験」では、ニュースの中から行政書士受験生に役立つものを取り上げ、学習のポイントを解説していきます。
今回は、行政書士試験の重要科目である「民法」からです。
時事問題ですので、もちろん行政書士受験生以外の方でも興味を持っていただけると思います。よろしければぜひご覧になってください。
本日取り上げる時事問題は「特別養子縁組年齢引き上げ案」です。
法相の諮問機関である「法制審議会」は、2019年1月29日、特別養子縁組制度の対象年齢を6歳未満から15歳未満に引き上げる民法改正要綱案をまとめました。
法制審議会は、法相に答申し、国会への民法改正案の提出を目指しています。
この背景には、実親による児童虐待の増加があります。
現行の民法では、6歳以上の児童養護施設に入所する子供は、特別養子縁組制度の対象外です。実親が何らかの事情で育てることのできない子供のための制度なので、より幼い子供が対象とされていました。
今回、民法改正案が成立すると、小学生・中学生も対象となります。
行政書士受験生 注目ポイント
子には、「実子」と「養子」がいます。
「実子」は、血縁関係のある子、「養子」は血縁関係がない子のことです。
そして、養子には、「普通養子」と「特別養子」の制度があります。
行政書士受験生は「普通養子」「特別養子」の違いを押さえましょう。
一番大きな違いは、実親との親族関係です。
「普通養子縁組」の場合、実親との親族関係は終了しないのに対して、「特別養子縁組」の場合、実親との親族関係は終了します。
実親との縁を切って、養親と実の親子関係を築いていくようなイメージです。
細かい違いを見ていきましょう。
「普通養子縁組」は、実親との法律上の親族関係が終了しない養子縁組です。
養子になったからと言って、実の両親の相続権や扶養義務など法律上の権利はなくなりません。
年齢制限もなく、成人も養子になれますが、自分より年上の人を養子にすることはできません。
戸籍には「養子」「養女」と記載されるので、戸籍を見れば自分が養子であることがわかります。
たくさんの家族がこの普通養子縁組制度を利用しています。
例えば、子供のいないご夫婦が氏を残すため、または相続のために普通養子縁組をするケースが多いです。
また、お母さんが子供を連れて再婚する場合、新しいお父さんと子供が普通養子縁組をすることもあります。
これに対して、「特別養子縁組」は、実親との法律上の親族関係が終了する養子縁組です。
この制度は、行政法の判例で有名な菊田医師の「赤ちゃんあっせん事件」がきっかけでできました。
幼いうちに実親との関係を切って、新しい両親との強い結びつきを築くという子供の成長に影響の大きい制度なので、家庭裁判所の審判が必要です(民法817条の2)。
養親は「配偶者のある者」とされており、内縁関係や事実婚の夫婦は特別養子縁組の対象外です。
また、原則、養親は25歳以上とされています。考えも成熟し、経済的にも安定してくる年齢だと考えられているからです。
そして、6ヵ月以上の監護期間(本当の親子関係を築くことができるのかどうかの試験期間のようなもの)が設けられます。原則、親族関係が終了する実親の同意も必要です。
戸籍上も実子と変わらない記載がされるので、戸籍を見ても養子であることはわかりません。
特別養子縁組はこのように厳しい手続きを経て成立するので、なかなか「離縁」することができません。
養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
実父母が相当の監護をすることができること
養子の利益のため特に必要があると認められること
この3つすべてに当てはまるときでなければ、家庭裁判所は審判をすることができません。
行政書士受験生 注目ポイント まとめ
「普通養子縁組」「特別養子縁組」の制度の違いを比較して覚えましょう。 「法制審議会」は「諮問機関」です。法相は諮問機関の答申に拘束されないことを確認しましょう。 「赤ちゃんあっせん事件」の判例で、行政法の「取消し」と「撤回」の違いを整理しましょう。 「嫡出子」「非嫡出子」の違いを説明できるようにしましょう。
毎日のように、悲しい児童虐待のニュースを耳にします。
実親に虐待を受けた子どもの中にも、特別養子縁組制度で幸せな家族と出会えた子どももいるそうです。
今回の改正要綱案が発表されてからは、必要性を認めながらも、中学生まで対象となる対象年齢などが議論となっています。
虐待のない社会の実現も大切ですが、子どもの命が失われないように緊急に様々な制度を整えることも大切です。改正案がこのまま成立するのか見守りたいですね。
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