こんにちは。オンスク行政書士講座、担当の藍澤です。
連載「時事問題で学ぶ行政書士試験」では、ニュースの中から行政書士受験生に役立つものを取り上げ、学習のポイントを解説していきます。今回は、行政書士試験の重要科目である「民法」からです。
時事ネタですので、もちろん行政書士受験生以外の方でも興味を持っていただけると思います。よろしければぜひご覧になってください。
本日取り上げる時事問題は「森友学園問題」です。
昨年、籠池夫妻のキャラクターや「忖度(そんたく)」という言葉で大きな話題になった森友学園問題。
事の発端は、2016年6月、近畿財務局が小学校の開設を計画した学校法人森友学園に、国有地を随意契約で売却したことでした。
2017年になって、その国有地の払下げ価格が安すぎることが発覚しました。というのも、他の学校法人が7億円で購入しようと交渉したところ、安すぎると断られていた土地だったからです。
不動産鑑定士による鑑定価格は9億5600万円。森友学園への払下げ価格は1億3400万円でした。8億円の割引です。
森友学園の元理事長である籠池さんが小学校名を「安倍晋三記念小学校」にしたいと発言したこと、安倍昭恵夫人が学園の「名誉校長」を務めていたことから、国有地の割引に安倍首相夫妻が関与しているのではないかと問題になりました。
このことについて、籠池さんが「安倍首相の口利きはない。(昭恵夫人が関わっている学校に財務省が)忖度をしたということでしょう。」と発言したことで、「忖度」という言葉が話題になりました。
また、財務省が国有地払下げの経緯を記した文書の一部を改ざんしていたことも問題になりました。
財務省が、首相や昭恵夫人の関与が疑われないように「忖度」し、価格の事前交渉を疑わせる文章等を削除し、国会に提出したことは、大きな衝撃を与えました。
行政書士受験生 注目ポイント
この事件は、「安すぎる土地の払下げ価格への疑惑」「小学校設置認可への疑惑」「公文書の改ざん」「補助金詐欺」など、様々な問題があって複雑です。
その中でも、行政書士受験生は「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」に注目しましょう。
今回、森友学園と国の国有地売買契約では、「瑕疵担保責任免除」の特約がつけられています。
この国有地は、地下にゴミ等が発見され、国は撤去費用を約8億2000万円と見積り、鑑定価格9億5600万円から値引かれました。これが、払下げ価格1億3400万円の根拠だとされています。
「瑕疵担保責任」とは、「売買契約の目的物に隠れた瑕疵があった場合の、売主の負う責任」のことです。
その瑕疵のために売買の目的を達することができない場合、買主は契約を解除することができます。また、損害賠償請求をすることもできます(民法570条)。
例えば、土地の購入後に、さらに地下深くから有害物質が発見され、撤去費用が10億円を超してしまうことになった場合を考えてみましょう。
危険なので小学校を建設することができなくなれば、森友学園は契約を解除することができます。また、国に対して損害賠償請求をすることもできます。
ですが「瑕疵担保責任免除」の特約がつけられていたということは、購入後は森友学園側から解除も損害賠償請求も一切できない、という約束がされていたということです。
ゴミの見積費用の根拠がないことなどから、この免責特約も問題をさらに複雑にしています。
なお、担保責任は任意規定なので、お互いがいいといえば、免除したり軽減することができます(原則)。
ただし、例外的に、売主が知っていながら告げなかった事実、第三者に対して自ら設定または譲渡した権利については責任を負います(民法572条)。
行政書士受験生 注目ポイント まとめ
売主の担保責任6種類を説明できるようにしましょう。 買主の主観(善意・悪意・無過失・有過失)で、できることが変わります。責任追及できる内容・期間制限を正確に覚えましょう。
「忖度」とは、相手の気持ちを推しはかることです。相手の心中を察して先回りしたり、空気を読んだりすることはありますよね。
相手を思って配慮することは、日本の美しい文化だと思います。ただ、その結果、嘘やごまかしを続けると、どこかで大きな責任を負い、後戻りできなくなります。
この事件でも、財務省の文書改ざんに関与していた職員の方が亡くなりました。国や行政には、今まで以上に「透明性」も求められますね。
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