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2020民法大改正|ビジネス実務への影響㉓ 契約の成立時期

2020民法大改正|ビジネス実務への影響㉓ 契約の成立時期

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

そこで本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説していきます。

今回のテーマは「契約の成立時期」です。民法の改正により、「契約の成立と方式」に関する規定が新設されました。また、隔地者間の契約の成立時期について、従来の「発信主義」から「到達主義」へと改めるなどの改正もなされています。

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1. 契約の成立と方式

改正後の民法(以下「新民法」という。)は、「契約の成立と方式」に関する規定を新設しました。この改正は、従来当然の原則とされていたものを明文化したものです。

(1)契約の成立

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立します(新民法522条1項)。

(2)契約の方式

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しません(新民法522条2項)。

2. 隔地者間の契約の成立時期

隔地者とは、意思表示が到達するまでに時間を要する者をいいますが、改正前の民法(以下「旧民法」という。)は、隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる(旧民法97条1項)として、「到達主義」を原則としつつも、隔地者間の契約の成立時期については、承諾の通知を発した時に成立する(旧民法526条1項)として、「発信主義」を採用しています。

新民法は、承諾も含めて「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」(新民法97条1項)と規定し、また、旧民法526条1項を削除して、契約の成立時期については、隔地者間の契約であるかどうかにかかわらず、承諾の通知の到達時としました。

この改正は、①承諾通知の発信時に契約が成立すると、申込者が知らない間に履行遅滞に陥るおそれがあるなど申込者が不測の損害を被るおそれがある、②当事者が迅速な契約の成立を望むのであればメール等を使えばよく、迅速な通信手段のある今日では例外規定を置く必要性に乏しい、③既にインターネット上の取引においては、発信主義ではなく、到達主義が採用されている(電子消費者契約法)との批判や指摘をうけてのものです。

3. 対話者に対する契約の申込みの効力等の明記

契約は、申込みがなされ、それに対して承諾があれば、成立します。申込みが撤回され、またはその効力の消滅後に承諾があっても、契約は成立しません。

この申込みに関して、隔地者に対して承諾の期間を定めないで(例えば、今月末までに回答してくださいと定めずに)行った申込みについては、旧民法に規定があるが、対話者(注)に対して承諾の期間を定めないで行った申込みについては、旧民法には規定がなく、そのルールが不明瞭であるとの指摘がありました。

(注)意思表示が到達するまでに時間を要する者を「隔地者」といいますが、これに対し、意思表示が到達するまでに時間を要しない者を「対話者」といいます。空間的な距離ではなく時間が判断の基準となるため、電話の相手方は対話者となります。

そこで、新民法は、対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みに関する従来の有力な解釈を明文化することとし、以下のような規定を新設しました。

対話者に対してした承諾の期間を定めない申込みは、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。(新民法525条2項、1項)

対話者に対してした承諾の期間を定めない申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。(新民法525条3、1項)

また、新民法は、上記の改正と併せて、以下のとおり、原則として撤回が不可とされる申込みでも、撤回権を留保したケースでは、撤回を可能とする例外的取扱いを認める従来の解釈を明文化する改正もなされています。

① 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。(新民法523条1項)

② 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。(新民法525条1項)

ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点

連載「2020民法大改正|ビジネス実務への影響」、今回は「契約の成立時期」について解説しました。

次回は「危険負担等」について解説します。

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