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2020民法大改正|ビジネス実務への影響㉙ 組合 その1

2020民法大改正|ビジネス実務への影響㉙ 組合 その1

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説してきましたが、残りも1テーマとなりました。

最後のテーマは「組合」です。組合は、複数の企業が合弁事業(複数の企業が事業の共同経営を行うことをいう。)を行う際に利用される組織形態の1種で、合弁事業においては、参加する企業が株式会社を設立して行う場合と並んで、この組織形態が多く利用されています。

組合について、改正後の民法(以下「新民法」という。)では、従来の実務で行われた一般的な解釈を明文化する改正等がなされています。

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1. 組合とは

組合とは、複数の者が、組合契約、すなわち、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約する契約(新民法667条1項)をして集合した場合における当該共同事業の主体となる団体をいいます。「出資」は、金銭の支出、物や知的財産権の提供(現物出資)だけではなく、労務でもよいとされています(新民法667条2項)。

組合は、構成員(組合員)相互が契約関係で結ばれており、会社と異なり、独立した法人格を有しない団体です。

2. 他の組合員の債務不履行

新民法は、「契約総則」の規定の一部について、組合契約には適用しない旨の改正を行っています。

① 第533条(同時履行の抗弁)および第536条(債務者の危険負担等)の規定は、組合契約については、適用しない。(新民法667条の2第1項)

組合契約においては、他の組合員が出資債務を履行していないことを理由として、自分の出資債務の履行を拒むことはできないのです。また、他の組合員の出資債務が履行不能になったからといって、自分の出資債務の履行を拒むことはできません
これらは、いずれも実務での一般的な解釈を明文化したものです。

② 組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。(新民法667条の2第2項)

3. 組合員の1人についての意思表示の無効等

新民法は、「組合員の1人について意思表示の無効または取消しの原因があっても、他の組合員の間においては、組合契約は、その効力を妨げられない。」(新民法667条の3)としました。

これは、組合員の1人について意思表示の無効または取消しの原因があった場合に、これにより組合契約全体を無効または取り消し得るとするのでは、組合契約の法的安定性を害するため、他の組合員の間では組合契約は効力を有するものとしたのです。

4. 業務の決定および執行の方法

改正前の民法(以下「旧民法」という。)は、「組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。」(旧民法670条1項)とし、さらに、「組合の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。」(旧民法670条2項)としていますが、業務執行権を誰が有するかについては規定していません。この点、実務では、原則として各組合員が業務執行権を有すると解されていました。

そこで、新民法は、以下のように規定して、各組合員または各業務執行者が組合の業務執行権を有することを明文化しました。

① 組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。(新民法670条1項)
② 組合の業務の決定および執行は、組合契約の定めるところにより、1人または数人の組合員または第三者に委任することができる。
③ 組合の業務の決定および執行の委任を受けた者(「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。

また、新民法は、以下のように規定して、他の組合員を代理して組合の業務を執行することができるのは、業務執行者があるときは業務執行者、業務執行者がないときは組合員の過半数の同意を得た各組合員であるとしました。

① 各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。(新民法670条の2第1項)
② 前項の規定にかかわらず、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる。この場合において、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができる。(新民法670条の2第2項)

ただし、組合の常務(日常反復継続して行われる軽微な事務)については、各組合員または各業務執行者が単独で組合員を代理して行うことができます(新民法670条の2第3項)。

2020民法大改正|ビジネス実務への影㉚ 組合 その2へ続きます)

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