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2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑧ 契約の解除 その2

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑧ 契約の解除 その2

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。

これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

そこで本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説していきます。

今回のテーマは前回に引き続き「契約の解除」です。

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2. 催告解除

旧民法は、履行遅滞による解除について、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と規定していました。

この規定を文言どおりに解釈すれば、債務不履行が軽微であるときでも、催告したうえでの解除が認められるかのように思えますが、判例は、不履行の程度が必ずしも重要でない場合(例えば、パソコンの売買において、当該パソコン本体に目立たない程度の引っ掻き傷がついていた場合)や、付随的な債務の不履行にすぎない場合(例えば、パソコンの売買において、「長時間連続して使用すると本体に熱がこもり、破損するおそれがある」という使用上の注意を付すことを怠った場合)については、解除を認めていませんでした。

そこで、新民法は、上記判例を踏まえて、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。」(新民法541条)と規定して、債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約の解除をすることはできないとしました。

新民法の内容は、従来の判例の見解を踏襲するもので、現行のビジネス実務に直ちに大きな影響を及ぼすものではないと考えられます。

ただ、前記下線部の「債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」というのは、具体的にはどのような場合をいうのかが明らかでないため、この文言の解釈に関する今後の判例の動向には十分な留意が必要であろうと思われます。

3. 無催告解除

旧民法は、定期行為(結婚式当日に式場に花束を届けるというように、契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない行為)の履行遅滞による解除について、「当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。」と規定していました。
また、履行不能による解除について、「履行の全部または一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。」と規定して、無催告解除を認める規定を設けていましたが、一般に、これらのほかに、債務者が履行を拒絶する意思を明示したときや、契約の目的を達するのに充分な履行が見込めないときにも、無催告解除が可能であると解されています。

そこで、新民法は、上記解釈を踏まえて、無催告解除が認められる場合を、以下のように規定しました。

次に掲げる場合には、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる(新民法542条1項)。
 ① 債務の全部の履行が不能であるとき。
 ② 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 ③ 債務の一部の履行が不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
 ④ 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
 ⑤ 上記の場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

また、新民法は、次に掲げる場合には、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができるとしました(新民法542条2項)。

① 債務の一部の履行が不能であるとき。
② 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

要するに、目的を達成することができなくなった場合には催告をしても意味がないことから、無催告解除ができるということです。

無催告解除に関する改正は、従来の一般的な見解をほぼ踏襲する内容であるため、ビジネス実務に与える影響は少ないものと思われます。

2020民法大改正|ビジネス実務への影響④ 債権譲渡

連載「2020民法大改正|ビジネス実務への影響」、今回は2回に分けて「契約の解除」について解説しました。

次回は「売主の担保責任」について解説します。

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