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2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑬ 債権者代位権 その2

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑬ 債権者代位権 その2

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

そこで本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説していきます。

今回のテーマは前回に引き続き「債権者代位権」です。

前回は、旧民法における債権者代位権のルールについて解説しました。今回は、新民法における債権者代位権のルールについて説明します。

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1. 債権者代位権の要件

新民法は、以下の3つのルールを定めています。

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(「被
代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利
および差押えを禁じられた権利は、代位行使することができない。(新民法423条1項)

債権者は、その債権の期限が到来しない間は、保存行為の場合を除き、被代位権利を行使することができない。(新民法423条2項)

債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。(新民法423条3項)

新民法は、債務者の一身に専属する権利(一身専属権)だけでなく、差押えが禁じられた権利(差押禁止債権)も代位行使できないことを明文化しました(上記①)。
一身専属権」とは、その権利を行使するかどうかを債務者自身の意思に任せるべきであるとされる権利をいい、例えば、親権、扶養請求権、夫婦間の契約取消権、夫婦間の同居請求権、財産分与請求権、名誉毀損等の人格権侵害による慰謝料請求権などが該当します。
差押禁止債権」とは、例えば、年金受給権や賃金債権の4分の1を超える部分などです。

また、債権者代位権が責任財産を保全して強制執行の準備をすることを目的とする制度であることから、被保全債権が強制執行により実現することのできない権利である場合には、被代位権利を行使できないことを明文化しました(上記③)。
強制執行により実現することのできない権利」とは、例えば、債権者と債務者との間に強制執行をしない旨の合意(不執行合意)があるような場合です。

上記①および③は、いずれも、異論のなかった解釈や判例法理を明文化したものです。そして、債権者が有する被保全債権の履行期が未到来の場合については、旧民法では、裁判上の代位によれば代位行使できるとされていたのを、現実には、裁判上の代位を実務上利用する例が少ないことから、これを廃止し、保存行為(未登記の権利の登記など)の場合を除いて代位行使できないとしました(上記②)。

2. 債権者代位権の行使の範囲

債権者代位権の行使の範囲については、旧民法に規定がなく、被代位権利が金銭債権などの可分債権である場合に、被保全債権の範囲内においてのみ債権者代位権を行使できるとするのが判例でしたが、新民法は、この点についても、「債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。」(新民法423条の2)と規定して、判例の法理を明文化しました。

例えば、AがBに対して100万円の貸金債権を有しており、BもCに対して150万円の売掛代金債権を有しているという場合には、Aは、被代位権利であるBのCに対する売掛代金債権のうち、100万円についてしか債権者代位権を行使できないことになります。

これとは逆に、被代位権利が可分債権でない場合、例えば、被代位権利が1個の物の引渡しを求める権利である場合には、債権者は、自分の債権の価値にかかわらず、被代位権利の全部について債権者代位権の行使が可能だということになります。

3. 債権者代位権の行使の効果

旧民法は、債権者代位権を行使した場合の効果については、明文の規定を設けていませんでしたが、新民法は、以下の①および②に掲げる規定を設けました。

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払いまたは動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払しまたは引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払しまたは引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。
(新民法423条の3)

これは、従来の判例法理を明文化したものであり、例えば、AがBに対して100万円の貸金債権を有しており、BもCに対して150万円の売掛代金債権を有しているという場合、Aは、Cに対して直接100万円の支払いを求めることができます。
なぜなら、これを認めないと、債務者Bがその受領を拒んだり、受領してもこれを隠匿し、または費消する危険性があって、そのような場合には、責任財産の保全という債権者代位権の目的を達成することができないからです。

Aの請求に応じてCがAに100万円を支払ったときは、BのCに対する売掛代金債権は、100万円について消滅します。

債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。(新民法423条の4)

この規定も、従来の判例法理を明文化したものです。
債権者代位権行使の相手方(第三債務者)は、債務者自身がその権利を行使するときより不利益な地位に立つべきではありませんので、債務者に対するすべての抗弁を代位債権者に対して主張することができます。
例えば、前記の例において、債務者Bが売主として買主C(第三債務者)に対して有する売掛代金債権を債権者Aが代位行使してきた場合、買主Cは、まだBから商品の引渡しを受けていないときは、Aに対して同時履行の抗弁権を行使して、支払いを拒むことができます。

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑬ 債権者代位権 その3へ続きます)

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