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2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑨ 売主の担保責任 その1

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑨ 売主の担保責任 その1

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

そこで本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説していきます。

今回、3回に分けて取り上げるテーマは「売主の担保責任」です。

宅地建物取引業者、不動産投資顧問業者などのような不動産を取引の対象とする事業者の方にとって、担保責任に関する法律知識は不可欠であり、とりわけ、民法の「売主の担保責任」に関する知識は、実務上重要なものであるといえます。
また、不動産以外の商品を販売する事業者の方にとっても、売主の担保責任に関する知識は欠かせません。
さらに、売主の担保責任に関する規定は、賃貸借、請負その他売買以外の有償契約にも準用されますので、賃貸マンションやアパートのオーナーの方や建設業者の方も、売主の担保責任の内容を押さえておくことが必要です。

今回の民法改正では、売主の担保責任の内容が大きく変わり、従来の通説的見解を採用するなど多くの改正がなされています。

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1. 改正前の民法における売主の担保責任

新たな売主の担保責任の内容を理解するためには、改正前の民法(以下「旧民法」という。)における売主の担保責任の内容を知り、両者の違いを押さえることが不可欠です。そこで、まず、旧民法における売主の担保責任の内容から見ていきましょう。

旧民法は、売買の目的物が本来備えているべき性質を備えていない場合、すなわち、瑕疵がある場合について、これを「物の瑕疵」と「権利の瑕疵」とに分けて、それぞれの場合における売主の担保責任について、次のような規定を設けていました。

(1)物の瑕疵の場合(旧民法570条、566条)

売買の目的物に隠れた瑕疵(隠れた瑕疵とは、取引通念上要求される注意を払っても発見できない欠陥をいいます。)があった場合には、善意・無過失(条文上は善意のみ要求されますが、判例はさらに無過失も要求しています。)の買主は、損害賠償請求をすることができ、また、瑕疵のため契約をした目的を達成することができないときは、契約の解除をすることができる。

② 買主は、瑕疵を知った時から1年以内に権利を行使しなければならない。

(2)権利の瑕疵の場合

権利の全部が他人に属している場合(旧民法561条、562条)、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、善意の買主は、契約の解除をすることができ、また、損害賠償の請求をすることができる。悪意の買主は、契約の解除のみすることができる。
買主の権利行使について期間制限はない。

権利の一部が他人に属している場合(旧民法563条、564条)、売主がこれを買主に移転することができないときは、善意の買主は、代金減額請求・損害賠償請求することができ、また、残存する部分のみであればこれを買い受けなかったときは、契約の解除をすることができる。悪意の買主は、代金減額請求のみすることができる。
善意の買主は、事実を知った時から1年以内、悪意の買主は、契約の時から1年以内に、権利を行使しなければならない。

数量を指示して売買をした物に不足がある場合または物の一部が契約の時に既に滅失していた場合(旧民法565条、563条、564条)、善意の買主は、代金減額請求・損害賠償請求することができ、また、残存する部分のみであればこれを買い受けなかったときは、契約の解除をすることができる。悪意の買主は、何も請求できない。
善意の買主は、事実を知った時から1年以内に、権利を行使しなければならない。

売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権または質権の目的である場合(旧民法566条)、善意の買主は、代金減額請求・損害賠償請求することができ、また、これらの権利が存在するため契約をした目的を達することができないときは、契約の解除をすることができる。悪意の買主は、何も請求できない。善意の買主は、事実を知った時から1年以内に、権利を行使しなければならない。
以上のことは、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合およびその不動産について登記をした賃貸借があった場合も同様である。

売買の目的である不動産について存した先取特権または抵当権の行使により買主がその所有権を失った場合(旧民法567条)には、買主は、善意・悪意にかかわらず、契約の解除をすることができ、また、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。そして、損害を受けたときは、損害賠償請求をすることができる。
買主の権利行使について期間制限はない。

改正後の民法における売主の担保責任については、次回以降で説明します。

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑪ 売主の担保責任 その2へ続きます)

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