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2020民法大改正|ビジネス実務への影響㉗ 寄託

2020民法大改正|ビジネス実務への影響㉗ 寄託

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

そこで本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説していきます。

今回のテーマは「寄託」です。寄託については、これを「要物契約」から「諾成契約」へ改めるほか、新たに「混合寄託」という制度を設けるなどの改正がなされています。

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1. 諾成契約への変更

改正前の民法(以下「旧民法」という。)は、「寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」(旧民法657条)と規定して、寄託は、当事者間の合意だけでなく、目的物の引渡しがあってはじめて成立する「要物契約」であることを定めていました。
ただし、判例上、合意のみによって成立する「諾成的寄託契約」というものも認められ、実務上もこれが利用されていました。

そこで、改正後の民法(以下「新民法」という。)は、「寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」(新民法657条)と規定して、寄託契約を「諾成契約」に改めました。

また、目的物の交付前の契約の解除について、以下のルールを新設しました。

① 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる(新民法657条の2第1項前段)。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる(新民法657条の2第1項後段)。

② 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる(新民法657条の2第2項本文)。ただし、書面による寄託については、この限りでない(新民法657条の2第2項ただし書き)。

これは、軽率な契約や紛争のおそれを防止する趣旨です。

③ 受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる(新民法657条の2第3項)。

これは、寄託物の保管場所を確保し続ける負担から受寄者を解放する趣旨です。

2. 混合寄託の新設

混合寄託とは、受寄者が複数の寄託者から保管を委託された同一の種類・品質の物を混合して保管し、後に同じ数量を返還する類型の寄託をいいます。
混合寄託は、現実に行われているものの、民法に明文の規定がなく、そのルールが不明瞭でした。

そこで、新民法は、混合寄託について、以下のように規定して、これを明文化するとともに、そのルールを定めました。

① 複数の者が寄託した物の種類および品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる(新民法665条の2第1項)。

② 受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる(新民法665条の2第2項)。

③ 寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる(新民法665条の2第3項前段)。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない(新民法665条の2第3項後段)。

3. 消費寄託の改正

消費寄託とは、受寄者が保管を委託された物そのものではなく、それと種類・品質・数量の同じ物を返還するという寄託をいいます。
「寄託」という文言は用いられていますが、これは寄託ではなく、消費寄託については、消費貸借の規定を準用することとされました(旧民法661条1項)。銀行等の金融機関との預貯金契約が消費寄託の典型例です。

普通預貯金のように、返還時期を定めない消費寄託については、寄託者(預貯金者)は、いつでも預貯金の返還を請求することができる(旧民法666条2項)とされていますが、返還時期の定めがある場合には、旧民法の消費貸借には規定がありませんので、その返還時期の前に預貯金の返還を請求することはできないことになります。

しかし、消費寄託においては、返還時期を定めたときでも、寄託者は、いつでも寄託物の返還を請求できるとするのが合理的です。

そこで、新民法は、消費寄託について消費貸借の規定を包括的に準用する旧民法666条1項を削除し、消費寄託については、「寄託の規定が原則として適用される」こととしました。
この改正により、定期預貯金のように、返還時期の定めのある消費寄託の場合でも、預金約款等に別段の定めがない限り、寄託者(預貯金者)は、いつでも預貯金の返還を請求できることになります。

なお、受寄者の寄託物の返還については、消費貸借の規定が準用されて、受寄者は、返還時期の定めの有無にかかわらず、いつでも寄託物の返還をすることができるとされました(新民法666条3項による591条2項・3項の準用)。

従って、銀行等の金融機関は、普通預貯金であっても、定期預貯金であっても、いつでも預貯金の返還ができることとなります。

4. 第三者との関係

旧民法は、寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対する訴えの提起等をした場合に、受寄者は寄託者に通知する義務を負う旨を規定するのみですが(旧民法660条)、受寄者は寄託物を誰に返還すればよいのかなどについて明確なルールを定めるべきではないかとの指摘がありました。

そこで、新民法は、寄託物に関する権利を主張する第三者との関係について、以下のように、明確なルールを定めました。

① 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、または差押え、仮差押えもしくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない(新民法660条1項本文)。ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない(新民法660条1項ただし書き)。

第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない(新民法660条2項本文)。ただし、受寄者が寄託者に通知をした場合または通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない(新民法660条2項ただし書き)。

③ 受寄者は、寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない(新民法660条3項)。

ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点

連載「2020民法大改正|ビジネス実務への影響」、今回は「寄託」について解説しました。

次回は「請負」について解説します。

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