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2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑯ 詐害行為取消権 その2

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑯ 詐害行為取消権 その2

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
これに伴い、企業がビジネス実務上の影響を受ける点がいくつかあります。改正点についての正確な知識がなければ、不利益を受ける危険性もあります。

そこで本連載では、ビジネスパーソンが押さえておかなければならない、ビジネス実務に影響を与える主な民法改正点について30回にわたり解説していきます。

今回のテーマは前回に引き続き「詐害行為取消権」です。
前回は、改正前の民法の内容について説明しました。今回からは、改正後の民法(以下「新民法」という。)の内容について説明します。

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新民法の内容(1)詐害行為取消権の一般的要件

改正後の民法(以下「新民法」という。)は、詐害行為取消権について、以下のような規定を設けました。

① 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。(新民法424条1項)

② 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。(新民法424条2項)

新民法は、取消しの対象を「行為」と規定して、取消しの対象は「法律行為」に限られないことを明文化しました。

ただし、詐害行為取消権は、財産権を目的としない行為については、行使することができません。この点は、旧民法と同様です。
従って、婚姻・離婚・養子縁組など家族法上の行為は取消しの対象とはなりません。これは、詐害行為取消権が債務者の責任財産を保全して、債権者による強制執行を可能にするための制度だからです。
財産権と無関係な行為を取り消したとしても、債務者の財産が守られることはありませんし、将来の強制執行の助けになることもないからです。

また、相続の放棄も、身分行為であることから、取消しの対象とはならないとされています(判例)。

③ 債権者は、その債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。(新民法424条3項)

すなわち、債権の発生の原因が詐害行為の前に生じており、その原因に基づいて生じた債権である場合には、債権そのものの発生が行為の後であるとしても、詐害行為取消権の行使ができます

これにより、詐害行為後に発生した遅延損害金、将来の養育費、仕事完成前の請負工事代金債権などを被保全債権とする詐害行為取消権の行使が認められることになります。

④ 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。(新民法424条4項)

例えば、強制執行をしない旨の合意をしているような場合には、詐害行為取消権を行使することは認められません。

これは、詐害行為取消制度が、債務者の責任財産を保全して強制執行の準備をするものであることから、強制執行によって実現できない債権をもとに詐害行為取消しを求めることはできないものとしたのです。

ところで、新民法は、取消しの対象となる行為の類型ごとに詐害行為取消権の要件も規定しています。そこで、次の(2)から(4)では、取消しの対象となる行為の類型ごとの詐害行為取消権の要件について説明します。

新民法の内容(2)相当の対価を得てした財産の処分行為の特則

債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができます(新民法424条の2)。

① その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(隠匿等の処分)をするおそれを現に生じさせるものであること。

② 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。

③ 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

判例は、不動産を売却して消費・散逸しやすい金銭に換えることは、原則として詐害行為になるという見解を採っていましたが、相当の対価による売却等であるにもかかわらず、詐害行為取消しの可能性があるとされては、取引の相手方が萎縮してしまいます。そこで、新民法では、取引の安全を図って、上記のような規定を設けたのです。

新民法の内容(3)特定の債権者に対する担保の供与等の特則

債務者がした既存の債務についての担保の供与(抵当権の設定等)または債務の消滅に関する行為(弁済、代物弁済等)について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができます(新民法424条の3第1項)。

① その行為が、債務者が支払不能の時に行われたものであること。
支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます。

② その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

なお、上記の債務者がした既存の債務についての担保の供与または債務の消滅に関する行為が、債務者の義務に属せず、またはその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、その行為について、詐害行為取消請求をすることができます(新民法424条の3第2項)。

① その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。

② その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

詐害行為取消しの対象が不明確かつ広範であるときは、経済的危機に直面した債務者と取引する相手方が萎縮し、再建の可能性のある債務者が破綻に追い込まれるおそれがあります。
そこで、新民法は、債務者の財産や経営状況が悪化した場合の処分行為について、詐害行為取消しの対象となる範囲を限定する規定を設けたのです。

この規定によって、支払不能前に行われる債務の弁済や担保の供与は、原則として詐害行為取消しの対象とならなくなります。

ただし、支払不能の前であっても、債務者の義務に属さない担保の提供や債務消滅行為については、支払不能になる前30日以内になされた場合等は詐害行為取消しの対象となります。

新民法の内容(4)過大な代物弁済等の特則

債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、債務者が債権者を害することを知ってしたこと、受益者が悪意であること等一定の要件に該当するときは、債権者は、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができます(新民法424条の4)。

これにより、過大な代物弁済等による債務消滅行為については、過大な部分に関しては、支払不能前であっても、債務者が債権者を害することを知って当該行為をした場合には、取消しの対象となります

2020民法大改正|ビジネス実務への影響⑰ 詐害行為取消権 その3へ続きます)

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