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2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑩ 債権譲渡 その1

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑩ 債権譲渡 その1

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されます。
本連載では30回に渡り、2020年度宅建試験に出題の可能性のある民法改正点に焦点を当てて解説をしていきます。

今回3回に分けて取り上げるテーマは、債権譲渡に関する改正点です。

債権譲渡については、宅建試験では、近年は、1年おきに出題される傾向にあります。
昨年(2019年)は出題がありませんでしたので、今年(2020年)は出題される可能性がきわめて高いと予想します。
改正点を中心にしっかりと知識を固めておくことが必要です。

以下の各項目の本文中、赤字にした箇所は、宅建試験に出る可能性がある重要ポイントですので、必ず押さえるようにしてください。

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1. 将来債権の譲渡が可能であることを明らかにする規定の新設

改正前の民法(以下「旧民法」という。)には、将来発生する債権、例えば‟医師の患者に対する治療が完了した後に発生する診療報酬債権などを譲渡することができる“については、規定がありませんでしたが、実務では従来、医師が医療機器の購入資金等の融資を受けるために、担保の目的で将来発生する診療報酬債権を譲渡することは行われており、判例も、将来発生する債権の譲渡を認めてきました。

そこで、改正後の民法(以下「新民法」という。)は、将来発生する債権の譲渡も可能であることを条文上も明確にするため、次のような規定を新設しました。

債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。(新民法466条の6第1項)

債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。(新民法466条の6第2項)

この規定により、例えば、AがBに対して将来取得する債権をCに譲渡した場合、その譲渡は有効であり、Cは、将来、現実にその債権が発生したときは、当然にその債権を取得することになります

2. 債権の譲渡制限特約の効力の見直し

(1)旧民法の下での譲渡制限特約の効力

旧民法は、「債権は、譲り渡すことができる。」(旧民法466条1項本文)とした上で、当事者間(債権者と債務者)の合意により譲渡制限(禁止)特約を付すことができるとしていました(旧民法466条2項本文)。

そして、譲渡制限(禁止)特約があるにもかかわらず、債務者の承諾なく債権が譲渡された場合において、譲受人が特約の存在について悪意または重過失であるときは、その債権譲渡は無効とされました(判例)。

他方で、債務者は、譲渡制限(禁止)特約を善意・無重過失の譲受人には主張することができないとされていました(旧民法466条2項ただし書、判例)。

(2)新民法の下での譲渡制限特約の効力

①新民法は、「当事者が債権の譲渡を禁止し、または制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」(新民法466条2項)と規定し、譲渡制限特約に違反して債権が譲渡された場合でも、その譲渡を無効とせずに、有効としました

近時、債権譲渡による資金調達が、特に中小企業の資金調達手法として活用されることが期待されているところ、旧民法および判例の譲渡制限特約違反の債権譲渡を無効とする処理が資金調達を行う際の支障になっていました。また、譲渡制限特約が付された場合に、債権者が債権譲渡に必要な債務者の承諾を得られないことが少なくないため、債権譲渡が無効となる可能性が払拭しきれないことから、譲渡に当たって債権の価値が低額化する傾向がありました。
そこで、新民法は、債権譲渡による資金調達を得やすくするために、譲渡制限特約に違反して債権が譲渡された場合でも、その譲渡を有効としたのです。

② 新民法の下では、譲渡制限特約に違反して債権が譲渡された場合でも、譲渡は有効であることから、その債権は譲受人に帰属することになり、譲受人が新たな債権者となります。

もっとも、譲渡制限特約を結ぶ債務者の利益(債権者の変更に伴う事務負担の回避、二重払いの危険の回避等)を保護するため、「譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」(新民法466条3項)と規定して、譲渡制限特約の存在につき悪意または重過失の譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができるとしました。

新民法の下での譲渡制限特約の効力

ただし、債務者が債務を履行しない場合において、第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者は、第三者が悪意または重過失であったとしても、債務の履行を拒むことができず、また、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができません(新民法466条4項)。

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑪ 債権譲渡 その2へ続きます)

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