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2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑯ 弁済・相殺 その4

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑯ 弁済・相殺 その4

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。

本連載では30回に渡り、2020年度宅建試験に出題の可能性のある民法改正点に焦点を当てて解説をしていきます。

今回のテーマは前回に引き続き「弁済・相殺」です。

前々回は相殺が禁止される場合について、旧民法の内容を説明し、前回は新民法の内容を説明しました。今回はその続きとなります。

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相殺についての改正点②相殺が禁止される場合(2)新民法の規定

(2)新民法の規定 ③ 差押えと相殺についての改正

旧民法は、自働債権が受働債権の差押え後に取得された債権である場合の相殺を禁止していますが(前記(1)の④)、自働債権が受働債権の差押え前に取得された債権である場合の相殺の可否については規定していません。
ただ、判例は、従来から、自働債権が受働債権の差押え前に取得された債権である場合の相殺を認めています。

そこで、新民法は、判例の見解を採用して、次の下線部のような改正を行いました。

差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができないが、差押え前に差押取得した債権による相殺をもって対抗することができる(新民法511条1項)

従って、例えば、下記の図のようにAの貸金債権の取得日が2020年3月1日で、Cの差押えが2020年4月1日であったというような場合には、Aは、その後相殺適状になったときは、その貸金債権を自働債権として、Bの代金債権(受働債権)と相殺をすることができます。
なぜなら、もしこの場合にも相殺を認めないとすれば、Cの差押え前に既に生じていたAの相殺に対する期待を奪うことになり、不当だからです。

なお、この場合、Cの差押えの時点では相殺適状になく、差押え後に相殺適状に達したとしても、また、Aの債権(自働債権)の弁済期が差し押さえられたBの債権(受働債権)の弁済期よりも後に到来するものであったとしても、Aは相殺することができることに注意してください。

新民法の下での譲渡制限特約の効力

さらに、新民法は、「差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。」と規定しました(新民法511条2項本文)。

例えば、下記の図のように、Aに対して100万円の貸金債権を有するBが、Aとの間でBの商品についての売買契約を締結し、1,000万円の代金債権を有していたとします。
その後、商品の代金がAからBに弁済されて代金債権が消滅しましたが、Bの債権者であるCが貸金債権を差し押さえたところ、その差押え後に、AがBから引渡しを受けた商品に欠陥(契約不適合)があることが判明し、AがBに対して債務不履行に基づく100万円の損害賠償請求権を取得したという場合には、この損害賠償請求権は差押え後に取得された債権ではあっても、その発生原因である売買契約は差押え前に生じているため、相殺適状にあれば、Aは、この損賠賠償請求権を自働債権とし、BのAに対する貸金債権を受働債権として、相殺をすることができます

新民法の下での譲渡制限特約の効力

これは、自働債権の発生が差押え前の原因に基づくものであるときは、第三債務者(上記の事例の場合はAを指します)の相殺に対する期待は保護に値すると考えられるからです。

(2)新民法の規定 ④ 相殺の充当に関する規定の改正

新民法は、相殺の充当に関する規定について改正を行っています。宅建試験における出題の可能性はそれほど高くないと思いますが、参考までに挙げておきます。

債権者が債務者に対して有する1個または数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する1個または数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する(新民法512条1項)。

6. 債権譲渡における債務者の抗弁

連載「宅建試験で聞かれる民法改正点」、今回は2020年度宅建試験で聞かれる可能性が高い民法改正点のうち、「代理」について3回に分けて解説しました。

次回は「連帯債務」について解説していきます。

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