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2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|㉒ 委任・請負 その1

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|㉒ 委任・請負 その1

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
本連載では30回に渡り、2020年度宅建試験に出題の可能性のある民法改正点に焦点を当てて解説をしていきます。
今回2回に分けて取り上げるテーマは「委任・請負」です。

委任と請負は、宅建士試験では、売買、賃貸借に次いで重要な項目となっていますが、委任については、その種類が「履行割合型」と「成果完成型(成果報酬型)」に分けられるなどの重要な改正があり、また、請負についても、報酬請求権や担保責任などについて重要な改正があります。

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委任(1)自己執行義務(復受任者の選任等)

改正前の民法(以下「旧民法」という。)の下では、委任契約は、当事者間の信頼を基礎とする契約であるため、明文の規定はありませんでしたが、受任者は、原則として、自ら委任事務を処理すべき義務(自己執行義務)を負うと解されていました。

また、受任者が、さらに復受任者(受任者が委任された事務を処理するために自らの名において選任した者をいいます。)を選任できるのは、例外的な場合に限られており、復受任者の選任については、任意代理人が復代理人を選任できる場合に関する旧民法104条の規定の類推適用による(本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるとき)と解されていました。

この自己執行義務・復受任者の選任について、改正後の民法(以下「新民法」という。)は、受任者は、原則として、自己執行義務を負うことを前提として、「受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。」(新民法644条の2第1項)としました。

委任(2)復受任者の権利義務

旧民法の下では、復受任者の権利義務について明文の規定はないものの、判例上、委任者と復受任者との関係について、旧民法が本人と復代理人との間に直接の権利義務関係が生じると定めていることから、受任者と復受任者との間に委任に基づく権利義務関係が成立するとともに、委任者と復受任者との間にも直接の権利義務関係が成立すると考えられていました。

新民法は、委任者と復受任者の権利義務関係について明文化することとし、「代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。」としました(新民法644条の2第2項)。

委任(3)報酬の支払時期

報酬の支払時期について、旧民法は、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。」(旧民法648条2項本文)と規定して、当事者間に特に定めがなければ、後払いとされていました。

新民法は、報酬の支払時期について、委任を「履行割合型」と「成果完成型(成果報酬型)」とに分類して、それぞれ規定を設けました。

① 履行割合型

履行割合型とは、委任事務の処理の割合に応じて報酬が支払われる場合をいいます。
例えば、AがBに対して、毎月一定の仕事(帳簿への記帳やコンピュータへのデータ入力作業など)をすることを依頼し、その仕事の量に応じて報酬を支払うというような場合です。

この場合については、新民法でも、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。」(新民法648条2項本文)と規定されており、当事者間に特に定めがなければ、後払いとなります。

② 成果完成型(成果報酬型)

成果完成型とは、委任事務を処理した成果に対して報酬が支払われる場合をいいます。例えば、Aが宅地建物取引業者Bに対して、宅地建物の売買契約の代理を依頼し、Bが宅地建物の売買契約をCとの間で締結したならば、成功報酬として、Bに報酬を支払うというような場合です。

この場合については、新民法は、「委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。」(新民法648条の2第1項)と規定しました。これを整理すると、次のとおりです。

ⅰ 成果物の引渡しを要しない場合
成果物の完成後に報酬の支払いを請求できます。
ⅱ 成果物の引渡しを要する場合
成果物の引渡しと同時に報酬の支払いを請求できます。

委任(4)委任契約が途中で終了した場合の報酬請求権

委任契約が途中で終了した場合の報酬請求権について、旧民法は、「委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。」(旧民法648条3項)と規定していました。

新民法は、この場合については、「履行割合型」と「成果完成型(成果報酬型)」とに分けて処理をしています。

① 履行割合型

委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなった場合、または委任が履行の中途で終了した場合には、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができます(新民法648条3項)。

② 成果完成型(成果報酬型)

委任者の責めに帰することができない事由によって成果の完成が不能となった場合、または委任が成果を得る前に解除された場合には、受任者が既にした委任事務の処理の結果のうち可分な部分の給付によって委任者が利益を受けるときは、その部分を得られた成果とみなし、受任者は、委任者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされました(新民法648条の2第2項、634条)。

これは、成果完成型の委任契約は、請負契約に類似する点がありますので、請負契約において、仕事の一部が既に履行された後に請負契約が解除された場合、既に行われた仕事の成果を分けることができ、かつ、注文者が既履行部分の成果の給付を受けることに利益を有するときは、既履行部分についての報酬請求権を認めるという判例の見解を踏まえた改正です。

委任(5)委任契約の任意解除権

委任契約は、当事者間の信頼を基礎とする契約であるため、この信頼関係が失われた場合には、相手方になんら債務不履行がなくても、委任契約を解除することできます。

この点につき、旧民法は、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」(旧民法651条)と規定していました。

委任契約の任意解除権について、新民法は、次のように規定しました。

① 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる(新民法651条1項)。
② 委任の解除をした者は、相手方に不利な時期に委任を解除した場合、または委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除した場合には、やむを得ない事由があったときを除き、相手方の損害を賠償しなければならない(新民法651条2項)。

上記の「受任者の利益をも目的とする委任」とは、例えば、Aが、Bに対し、AのCに対する債権の取立てを委任し、取立金額をBに対するAの債務の弁済に充てることを内容とする契約や、Aが所有する不動産の売却をBに委任し、その売却代金をBに対する債務の弁済に充てることを内容とする契約などをいいます。

(2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|㉓ 委任・請負 その2へ続きます)

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