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2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑲ 保証債務 その1

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑲ 保証債務 その1

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
本連載では30回に渡り、2020年度宅建試験に出題の可能性のある民法改正点に焦点を当てて解説をしていきます。
今回3回に分けて取り上げるテーマは「保証債務」です。

保証債務は、抵当権と並ぶ債権担保の方法であり、宅建試験における頻出項目の1つとなっています。今回の民法改正により、保証債務についても多くの改正がありました。

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1. 保証とは

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います。すなわち、保証とは、主たる債務者が債務の履行をしない場合に、これに代わって履行をすべき義務のことをいいます。

保証債務は、債権者と保証人との間の保証契約によって成立しますが、保証契約は、書面またはその内容を記録した電磁的記録によってしなければ、その効力を生じません

新民法の下での譲渡制限特約の効力

(注)保証人となろうとする者は、通常は、主たる債務者の委託を受けて保証人となりますが、委託がなくても、さらには、主たる債務者の意思に反する場合でも、債権者との間で保証契約を締結することにより、保証人となることができます

保証人が主たる債務者に代わって債務を弁済した場合には、その弁済した金額等について主たる債務者に求償することができます。

2. 保証債務の性質

(1)別個の債務

保証債務は、主たる債務とは別個の債務です。

(2)付従性

主たる債務に対して付従性を有します。

① 保証債務は、主たる債務の担保を目的とする従たる債務ですから、主たる債務が成立してはじめて保証債務も成立し、主たる債務が弁済や時効により消滅すれば保証債務もまた消滅します。

② 保証債務は、その目的や態様において主たる債務より軽いことは差し支えありませんが、重くなってはなりません。保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます。

③ 保証債務が成立した後に、主たる債務の額が変更された場合、その変更が主たる債務の額を減額するものであるときは、保証債務の額もそれに附従して減額されますが、その変更が主たる債務の額を増額するものであるときは、保証債務の額はそれに附従して増額されることはありません。

④ 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定することができます。この場合には、保証債務の目的や態様が主たる債務より重くなっているのではなく、保証債務の履行を確実にすることが考えられているにすぎないからです。

⑤ 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁(相殺や同時履行の抗弁等)をもって債権者に対抗することができます。今回、この点について改正がありました。

改正前の民法(以下「旧民法」という。)は、保証債務の付従性に着目して、「保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。」(旧民法457条2項)と規定して、保証人が債権者から保証債務の履行を請求されたときに、主たる債務者が債権者に対して有する債権(反対債権)をもって相殺の主張をすることを認めていました。

新民法の下での譲渡制限特約の効力

また、上図において、Aの所有する家屋についてAB間で売買契約が締結され、AがBに対して代金の支払いを請求したが、Bがまだ家屋の引渡しを受けておらず、Aに対して家屋の引渡しとの同時履行の抗弁権を行使できる場合、Cは、Aからの保証債務の履行請求に対して、家屋の引渡しとの同時履行を主張して、Aの請求を拒むことができます。これは、付従性が根拠となります。

そして、同じく保証債務の付従性から、上図において、Bの主たる債務について消滅時効が完成した場合、Bが時効の援用をしなくても、Cは、独自に時効の援用をして、保証債務を免れることができます。
CがBの主たる債務の消滅時効を援用することにより、Bの主たる債務が消滅し、付従性によりCの保証債務も消滅するからです。

改正後の民法(以下「新民法」という。)は、保証人に認められるこれらの抗弁(主張)について、次のように規定しました。

ⅰ 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる(新民法457条2項)。
ⅱ 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(新民法457条3項)。

従来、主たる債務が詐欺、強迫、制限行為能力等を理由に取り消すことができる場合に、保証人が主たる債務者の有する取消権を行使して、保証債務の履行を拒むことができるのか、あるいは、主たる債務者が解除権を有する場合に、保証人がその解除権を行使して、保証債務の履行を拒むことができるのかという点が問題とされ、学説はおおむねこれを肯定するものの、判例の立場が不明でした。

そこで、新民法は、これらの問題を明確に解決すべく、保証人が主たる債務者の有する取消権・解除権を行使できることを明文化したのです。

(3)随伴性

主たる債務に対して随伴性を有します。

主たる債務が債権譲渡などによって移転した場合には、保証債務も移転します。例えば、債権者Aが保証付債権(主たる債務者をB、保証人をCとする)をDに譲渡し、その旨の通知がBになされた場合には、主たる債務者Bは、Dに対して債務を履行する責任を負うことになりますが、同時に、保証人Cも、Dに対して保証債務を履行する責任を負うことになります。

(4)補充性

主たる債務に対して原則として補充性を有します。

保証債務は、主たる債務が履行されないときにはじめてこれを履行する責任が生じるという性質を有し、このような性質を「補充性」といいます。

保証債務の補充性から、債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができるという「催告の抗弁権」を有しています。
また、債権者が主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならないという「検索の抗弁権」を有しています。

ただし、次回で解説する連帯保証には、補充性はありませんので、連帯保証人はこのような抗弁権を有しません

(2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑳ 保証債務 その2へ続きます)

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