民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
本連載では30回に渡り、2020年度宅建試験に出題の可能性のある民法改正点に焦点を当てて解説をしていきます。
今回のテーマは前回に引き続き「保証債務」です。
保証債務は、抵当権と並ぶ債権担保の方法であり、宅建試験における頻出項目の1つとなっています。今回の民法改正により、保証債務についても多くの改正がありました。
目次
3. 連帯保証
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担することを合意した保証をいいます。前回説明しましたように、連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権も認められません。
ただし、付従性や随伴性は連帯保証債務にもあり、また、主たる債務者が有する相殺権、同時履行の抗弁権、時効援用権、取消権、解除権については、連帯保証人も行使することができることに注意してください。
この連帯保証債務についても改正がありました。
改正前においては、連帯保証人に対する履行の請求は、連帯債務の「絶対効」に関する規定の準用により、主たる債務者に対しても、その効力(時効の中断(新民法では「時効の更新」といいます。))を生ずるとされていましたが(旧民法458条、434条)、新民法は、請求(履行の請求)を「相対効」としましたので、改正後は、連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務者に対しては、その効力が生じず、時効の完成猶予・時効の更新は、連帯保証債務についてのみ生ずるだけで、主たる債務については生じないことになります。
この点は、宅建試験に出る可能性が高いと予想されますので、しっかりと押さえておいてください。
例えば、Aに対してBが負う債務について、Cが連帯保証人となった場合、AがCに対して裁判上の請求をしても、Cの連帯保証債務について時効の完成猶予・時効の更新が生じるだけで、Bの主たる債務については時効の完成猶予・時効の更新は生じません。
4. 情報提供義務
改正により、保証人となろうとする者の保護を図るため、情報提供義務に関する規定が新設されました。
(1)保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本および主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものについての不履行の有無ならびにこれらの残額およびそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません(新民法458条の2)。
情報を提供しなければならない相手方は、委託を受けた保証人に限られることに注意してください。主たる債務の履行状況に関する情報は、主たる債務者にとって信用にかかわる情報であるため、委託を受けずに保証人となった者に対してまでこのような情報提供義務を負わせるのは妥当でないからです。
なお、この保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務は、保証人が個人であるか法人であるかを問わず、債権者に課せられることに注意する必要があります。
(2)主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
保証人の負担額は、主たる債務者が支払いを遅滞した後に発生する遅延損害金によって大きくふくらみます。
このことは、特に、主たる債務者が分割金の支払いを遅滞して 期限の利益(期限が到来するまでは債務の履行を強制されないという利益を「期限の利益」といいます。)を喪失し、一括払いを求められるケースにおいて顕著です。
また、主たる債務者が支払いを遅滞し、期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立替払いをして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策を取ることも可能ですが、保証人は、主たる債務者が支払いを遅滞したことを当然には知りません。
そこで、新民法は、個人保証人の保護を図るため、次のような規定を新設しました。
① 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人(法人を除く。)に対し、その利益の喪失を知った時から2ヶ月以内に、その旨を通知しなければなりません(新民法458条の3第1項)。
② 上記の期間内に通知をしなかったときは、債権者は、保証人(法人を除く。)に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から通知をするまでに生ずべき遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)にかかる保証債務の履行を請求することができません(新民法458条の3第2項)。
(2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|㉑ 保証債務 その3へ続きます)
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