posted

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑰ 連帯債務 その1

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑰ 連帯債務 その1

民法が約120年ぶりに改正され、改正法が2020年(令和2年)4月1日から施行(一部の規定は未施行)されています。
本連載では30回に渡り、2020年度宅建試験に出題の可能性のある民法改正点に焦点を当てて解説をしていきます。
今回2回に分けて取り上げるテーマは「連帯債務」です。

今回の民法改正により、連帯債務の相対効と絶対効について大幅な変更が行われています。改正前においては、連帯債務者の1人について生じた事由の効力が他の連帯債務者にも及ぶとされる「絶対的効力事由」であった請求(履行の請求)・免除時効の完成が、改正後においては、連帯債務者の1人について生じた事由の効力は他の連帯債務者には及ばないとされる「相対的効力事由」へと変わっています。

広告

1. 連帯債務とは

連帯債務とは、数人の債務者が同じ債務を負い、それぞれが債務の全額について履行する義務を負っており、1人が履行すれば、他の債務者の債務もまた消滅するという関係にある債務をいいます。

例えば、A、B、Cの3人が、Dの所有する1,200万円の不動産を、それぞれ400万円ずつ代金を負担する合意のもとに共同購入した場合において、代金債務を連帯債務としたときは、A、B、Cの3人は、それぞれがDとの関係において1,200万円全額を支払う義務を負うことになり、いずれか1人(例えばA)がDに対して1,200万円全額を支払えば、他の者(BおよびC)の代金債務もまた消滅するという関係をいいます。

新民法の下での譲渡制限特約の効力

連帯債務者は、互いに一定の負担部分(連帯債務者の内部において、各自が負担すべきこととなっている債務の割合)を有しています(前記の例でいえば、A、B、Cの3人は、Dの所有する1,200万円の不動産を、それぞれ400万円ずつ代金を負担する合意のもとに共同購入していますので、A、B、Cの負担部分はそれぞれ400万円ということになります)ので、もし1人が弁済をしたときは、他の債務者に求償することができます。
前記の例で、AがDの請求に応じて1,200万円全額を支払ったときは、Aは、BおよびCに対して、400万円ずつ求償することができます(注)。

(注)厳密には、求償の範囲には、B・Cの負担部分の額のほか、免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害賠償も含まれることに注意してください。

2. 相対的効力事由

相対的効力事由とは、相対効ともいい、連帯債務者の1人について生じた事由の効力は他の連帯債務者には及ばないとされる場合における、その事由をいいます。連帯債務は、これが原則です。

新民法の下での譲渡制限特約の効力

以下では、宅建試験で聞かれる可能性のある相対的効力事由を挙げておきます。

(1)承認

例えば、AがDに債務の「承認」をしても、Aの債務についてのみ時効の更新が生じるだけで、B・Cの債務については、時効の更新は生じません

(2)期限の猶予(支払猶予)の申入れ

AがDに「期限の猶予の申入れ」をして、Dがこれを承諾しても、B・Cについては、期限は猶予されません

(3)取消し

Aが未成年者であり、Dの不動産の購入につき法定代理人の同意を得ていないことを理由にDとの売買契約について「取消し」をしたとしても、Aが連帯債務関係から離脱するだけで、B・Cは、依然としてDに対して連帯債務を負います

ただし、B・Cの負担部分は、Aが連帯債務関係から離脱したために増加して、各自600万円ずつとなります。

(4)請求

DがAに裁判上の「請求」をしても、Aの債務についてのみ時効の完成が猶予されるだけで、B・Cの債務については、時効の完成は猶予されません

民法改正前は、連帯債務者の1人に対してした履行の請求の効力は、他の連帯債務者にも及ぶとされ、請求による「時効の中断」の効力が他の連帯債務者についても生じることとなり、請求は「絶対的効力事由」の1つでした。

それが、改正により「相対的効力事由」に変わりました。

(5)免除

免除」とは、債権者が債務者に対して持っている債権を放棄し、その債権を消滅させることをいいます。
DがAに対してその債務の「免除」をしても、Aが連帯債務関係から離脱するだけで、B・Cには免除の効力は及ばず、B・Cは、依然として、Dに対して1,200万円の連帯債務を負います。そして、B・Cの負担部分は、各自600万円ずつとなります。

民法改正前は、免除は、連帯債務者の1人が免除を受けた場合、その者の負担部分については、他の連帯債務者も債務を免れるという「絶対的効力事由」でした。

それが、改正により「相対的効力事由」に変わりました。

(6)時効の完成

Aの債務について消滅「時効」が完成した場合、Aは、その債務を免れて連帯債務関係から離脱しますが、B・Cには、時効完成の効力は及ばず、B・Cは、依然として、Dに対して1,200万円の連帯債務を負います
そして、B・Cの負担部分は、各自600万円ずつとなります。

民法改正前は、時効は、連帯債務者の1人の債務について消滅時効が完成した場合、その者の負担部分については、他の連帯債務者も債務を免れるという「絶対的効力事由」でした。それが、改正により「相対的効力事由」に変わりました。

2020年宅建試験に出る民法改正点を徹底解説|⑱ 連帯債務 その2へ続きます)

宅建講座

無料登録でオンラインの資格講座を体験しよう!

資格受け放題の学習サービス『オンスク.JP』では様々な資格講座のオンライン学習が可能です。
最短20秒の無料会員登録で、各講座の講義動画・問題演習の一部が無料体験できます。

※無料会員は、決済情報入力なしでご利用可能。
※自動で有料プランになることはありません。

無料体験でできること

無料会員登録

オンスク.JP 講座一覧

関連する記事が他にもあります

バックナンバー

宅建試験で聞かれる民法改正点

広告

お友達紹介特典URL発行

ログインが必要です

ページトップへ